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- 2026/01/22(木) 05:30:36|
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*オズ×ギルバート
『友情』を繋ぐ糸
『愛情』を繋ぐ糸
『理性』を繋ぐ糸
最期に残るのは
【唐草模様】
赤い絨毯に広がる花弁は紅の薔薇。
ひらめくシルクはドレスの裾で、耳に良く透る音は舞踏の曲の様だ。
「ビチャッ」
否。靴が埋もれているのは絨毯等ではなく、ましてや舞う布は華やかな衣装ではない。聴こえていた音はとても楽しめる内容ではなかった。足元に広がる血の湖と転がる肉片。断たれたそれ等の衣服が風に舞う。絶命の叫びは耳にこびり付いて離れない。
(ああ、気持ち悪い)
「―オズ!」
重力が小さな身体を押し倒そうとした時、不意に浮遊感が訪れた。懐かしい、しかし血に汚れた顔がそれは心配そうに此方を覗いている。何をそんなに心配しているのかと微笑もうとして、何も見えなくなった。
コトン。
びくりと身体が震え飛び起きた。
それに気付いた男がこれまた同じようにびくりとして此方を見た。瞬間、その顔に安堵が広がった。
「よかった。気付いたのかオズ」
彼は手にしていた(水をかえたらしい)花瓶を置いて額に触れてきた。
「…まだ駄目だな、もう少し寝ているといい」
穏やかな声に幾らか気分が楽になる。高鳴っていた鼓動が落ち着いて行くような気がした。
「ギル、」
席を立とうとした彼の名を呼ぶ。振り返ったその袖を掴み油断していた身体をベッドに引き倒した。
「――!」
あっけなく倒れた身体に身を翻して馬乗りになる。咄嗟の事にも関わらず、主に対して抵抗をしなかった事に感心しつつ鼻の先が触れあいそうな距離に顔を寄せた。みるみる内に赤くなるその顔に思わず苦笑が漏れる。
「オ、」
「うつしてやろうか?」
笑みを潜めて金色の瞳をみつめた。
垂れた前髪が彼の目蓋に触れ、彼は目を閉じた。その目蓋を舐めてやる。そこに微かにしょっぱさを感じて眉を顰めた。だが今はそれに触れず、固く閉じている唇に自分のそれを重ねた。軽く啄ばむだけでそれ以上は触れない。襟の空いた隙間から鎖骨が覗いていた。プチプチと釦を外していけば、大きな切り傷が顔を出す。
(ごめんね)
これ以上は癒えない傷跡に謝罪を込めて舌を這わせた。
「…ギル?」
両目を腕で塞ぐ彼に動きが止まった。そっとその腕を退けてやると目元を腫らした顔が現れる。
「泣いてんの?」
「……何でも、ない」
どうして明らかに嘘だと分かるにも関わらずそんな事を言うのか不思議だ。溜息を一つつき、濡れた頬にキスをする。先程と同じ塩味がした。
「じゃあ、先刻のは」
「さっき?」
「俺が起きる前」
彼は口を噤んだ。瞳の中が揺れている(ここまで解り易いのは逆に罪だろう)
「言って?」
「…お前が、」
言い辛そうだった。だが辛抱強くその先を無言で待ち、促す。
「倒れる前に、あんまり・・・綺麗に笑うから」
「――?」
「死ぬかと…思った、んだ」
成程、と思う反面で不思議でならなかった。綺麗だと死ぬのだろうか?
「ていうか、男に綺麗って」
「う、うるさい」
弱々しい声を発しながら手元のシーツを引き寄せて埋もれてしまった。
「ギールー」
呼びかけてみるが頑として出てくる気は無いらしい。無理に引き出すのを諦めた時、先程彼が持って来ていた花瓶が目に入る。ベッドから手を伸ばして小さな紫の花を一輪手に取ると、甘い香りがした。
「ねえギル」
「…?」
「綺麗な『都忘れ』だけど、今度ユリを持ってきてくれる?」
「なぜ?」
彼はシーツから怪訝そうな顔を出して此方を見た。
それを見て、今度こそ微笑んでやった。
「綺麗だから」
【アラベスク】
・都忘れ=憂いを忘れる
・百合=純潔(見舞いとしては縁起が悪い)
*オズ×ギルバート
*オズのモノローグ
知りたい?
【手記】
He exceeds time, it meets him, I exceed time, and it meets him.
What do you call without calling this a miracle?
The god might surely bind us indefinitely.
I will keep surely afflicting you to you who becomes it as for the beloved.
文字を列ねたノートを閉じる。
この世界へ戻って来てからもう随分と時間が経ったような気がしていた。一息つくとコンコンと軽いノック音がして返事をする。すると長身で黒髪の男が入ってきた。
「ギル、どうかした?」
「そろそろ紅茶でも淹れようかと思ってな」
「そう、今休憩しようと思ったとこ」
会話をしながらさり気無くノートを引き出しに仕舞う。見られて不味いものではないが、彼の性格上厄介な事になりそうだった。運ばれてきた紅茶を口に含み飲み干す。食道の中を通る温もりが、じんわりと心地よく身体に浸透していった。
「疲れたか?」
「うん、ちょっと横になろうかな」
ぼすんと身体を受け止めたベッドは柔らかく眠気を誘う。一つ息を吐き出し仰向けになる自分を、傍らに立った彼が気遣うように覗いてくる。その瞳へ口元に微笑を湛えながら見つめ返した。
Is he thinking of him as his desire of him?
Holding in high esteem?Friendship?Affection?
All differs. It is affection of love that I wants.
手を伸ばして指先で襟を引く。
誘う様な仕草と視線に彼が身を固くさせた事が分かった。戸惑い視線を泳がせるそれがもどかしく、今度は容赦なくその長身を引き倒した。
「痛ッ!」
それはこっちのセリフだとばかりにベッドが軋む。反転させた身体を羽交い締めにし呻く彼の耳元で甘く囁いた。
『Will you give all of you to me?』
表情は見えないがみるみる内に真っ赤になる首元。もう大人の癖になんて初心なんだと心の中で苦笑しながら手を離した。
「あはは!冗談だよ冗談」
「な…!か、からかうなっ」
「うんうん。ごめんね?」
顔を赤く染めたまま、捲し立て様とする彼を制してその手の甲にキスをする。自分も懲りないなと思いながら目まぐるしく顔色を変える様子を楽しげに見つめた。まだ顔の赤みも引かぬ内に部屋を去る彼の背に笑顔で送り出す。彼の性格上アレには望みが有るとも無いとも言い難かった。自分に寄り添う彼は本当に自分を見ているのだろうか。追いかけているのだろうか。
もし彼が『あの人』を追っているのだとしたら?自分の様な単なる巡り合わせではなく確かに共存していた『彼』に適う筈はない。きっと彼は曖昧な境界でゆらゆらと彷徨っている。大切な存在が近くに居るのに、目の前に居るのに分からないのだ。いや。本当は知りたくないのかもしれない。もし知ってしまったら?もしそれが望んだ形でなかったならば?自分は何処まで耐えられるか分からない。
I am weaker than he.
I am more fragile than he.Above all, I resemble him closely.
再びベッドに倒れ込み天井を見上げた。もしも彼が無意識下で自分の中に居る『誰か』を望むのなら。
『It only has to be able to disappear from this world…』
【手記】
彼が時間を越えて自分に逢い、自分が時間を越えて彼に逢う。
此れを奇跡と呼ばずに何と呼ぶ?
きっと神様はいつまでも私たちを縛るつもりなのだ。
最愛なる貴方へ。私はきっと貴方を苦しめ続けてしまうでしょう。
自分が彼を想うように彼は自分を想ってくれるのだろうか。
敬愛、友愛、親愛?どれも違う。私が欲しいのは恋愛の情なのだ。
私は「彼」より弱い。
私は「彼」より脆い。
そして何よりも、私は「彼」に酷似している。
ならばいっそこの世界から消えてしまえたらいいのに。