*ブレイクとシャロン
結んで開いて解けて結んで。
【赤い糸】
彼にとって私は妹のような存在であり、私にとって彼は兄のような存在である。
血も繋がっていない。ましてや幾つ年が離れているかなど計りたくもない事実がある。それでも私は彼が好き。恋している。愛している。
「愛し合いたい」
なんて我が侭は、口が裂けても言わないけれど。
受粉し結ばれた花々が綺麗に咲く季節は、色の増える季節。お
もちゃ箱のように色とりどりで可愛らしい景色。それは嬉しくもあり辛くもあり、といった心境にさせる。切ないほど綺麗な色は悲しいほどに彼の目には映らないのだ。振舞いたいように振舞える間柄であっても、流石に気持ちは浮かれない。
「ザクス兄さん」
声をかけると直ぐに此方へ向かってくる彼の足。
こんなに近くにいて、こんなに手が届くのに何故境界線が出来てしまうのか不思議だった。直ぐ隣までやってきた彼は、少し身を屈めて話を聞いてくれる。また何か粗相をしていなかったか尋ねたり、今夜の夕食のメニューを離したり、庭に咲く花の名前を教えたりと他愛のない話ばかりした。
言葉の裏に「愛しています」を隠しながら。
ある日彼は意識を失くして死体のような姿で帰ってきた。
呼吸は浅く、色も蒼白。もとより余命はわずかで、指先が震えた。彼と自分を結ぶ糸が切れてしまう。出会ってから少しずつ、少しずつ絡めてきた糸が外側から解れ始めているような気がした。
「まだ、」
まだ逝くには早すぎる。貴方がやっていない事も、自分がやり残している事も沢山ある。見た目の緊急さを余所に安定を始めた彼の隣で、一人ただ祈っていた。不安を煽る材料が揃い過ぎていたのだ。
目を覚ました彼はすみません、と一言謝罪をした。
何に謝っているのかとぶつけたが、正直自分も何に対して謝らせたいのか分からなかった。もどかしさが自分の中を渦巻いている。淡い色合いで湧きあがり始めたそれは次第に濃い色合いを持ち合わせ、不安で陰り出していた。表に出してはいけない。
「まだ大丈夫」
根拠も説得力もない言葉だけが支えている。
散々色恋沙汰に夢を見て本も読んできたが、これほど報われないものがあるだろうか。10年も一つ屋根の下にいて、身を守ってもらい、理解し合う間でありながら、「兄妹の様な関係」で終わってしまうのだ。大人は大人であり続けても、少女は少女のままではいられない。
「…糸が切れてしまいそう」
眠る彼の小指にそっと自分の小指を絡め、その場を後にした。
日の暮れ始めた庭の隅で雑草が花を咲かせていた。
結ばれた種の結晶は綺麗だった。その花を一輪摘み取り、誰に言うでもなく囁いた。
「愛していますわ。ザクス兄さん」
摘み取った花は、花びらが少し欠けていた。
【赤い糸】
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- 2012/05/04(金) 02:40:49|
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