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- 2026/01/22(木) 05:30:20|
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*ヴィンセント×ギルバート
*・17-18歳設定
『縛られる』という恍惚を貴方に
【唐草模様】
「おかえり兄さん」
僅かに戸の開いた部屋から弟の声がした。帰宅し、疲れた身体を自室へと運んでいた足が動きを止める。
「ただいまヴィンス」
声を掛けると弟は嬉しそうに笑った。彼は今年で17歳になる。だが彼は何時まで経っても人形遊びを止めないでいた。今も、ベッドの上で可愛らしい縫いぐるみ達を切り刻んでいる。
不思議だった。
母親の様な顔で人形をあやしながら鋭い刃物で突き刺し引き裂く所業。ああして大事そうに抱き抱えているのにその仕打ちは惨いとしか言いようがない。
「兄さん?」
「あぁ、すまない」
首を傾げた弟の声と暗く陰った視界に覚醒する。彼は目の前にいた。この家の人間は皆そうだが、黒い正装を着ている事が多い。だがこの状況で見ると宛ら喪服のようだった。
「ねぇ、今日はどんな仕事だったの?」
手にした人形を抱きしめながら、弟は此方の手を引いて話を促す。仕方ないので部屋のベッドに二人で腰掛け、ご要望の話を聞かせることにした。
「へえ、義父さんについてパーティーへ?」
「ごく小規模なものだけどな」
今回の事は身内ばかりの物で、単なる顔見せだったのだろうと思っている。
「どうだった?好みの女はいた?」
「…女性って言えよ。あまり顔は見てなかったが」
「声は掛けられた?」
「…まぁな」
「触られた?」
「…何だその父親みたいな質問は」
「気になるんだもの。兄さんが汚されたら大変だ」
「挨拶で手を」
実際は腕を回されたのだが、今は触れない方が賢明な気がして濁した。
「へぇ…」
隣に座っていた彼に、ベッドの上の手を重ねられた。
指の一本一本を絡めるように重ねられ、撫でる様な仕草に肩がびくりと震える。
「おい、何して…」
「汚れたみたいだから、綺麗にしてあげるよ」
「な、」
咎めようと持ち上げた手はしっかりと握りしめられ、彼の舌が掌を舐め上げた。全身を泡立つような感覚が走り抜ける。
半信半疑。だが確信めいた予感に身体が熱くなり掴まれた手を引き離す。
「止めろ!」
「どうして?」
何でもない。ただの遊びだ、とでも言っている様な顔をしていた。その穏やかな顔の下に何を隠しているのか。言い知れぬ恐怖心が湧き上る。
「嫌じゃないくせに」
「――ッ!?」
ネクタイを引かれ反った顔に強引に唇が重ねられる。立ち上がった彼が上から体重を掛け、後頭部を抱かれながら押し倒された。髪を縛っていた紺のリボンが解かれるとシーツに髪が広がった。圧し掛かる体重を何とか退けようと手を突っぱね足をもがく。
「――ッ悪ふざけは止よせ!」
「ふざけてないってば。それより兄さん、あんまり暴れると」
弟は自分の長い髪を縛っていたリボンも解き先程の紺のリボンと合わせて持つ。
「縛っちゃうよ?」
「…な、に」
二本のリボンを繋いで見せ笑う。
その顔が再び近づくと首筋に歯を立てられた。痛みに慄えた身体にまた彼は笑った。両手をベッドに縫い付けられ、気付けば手首はリボンでしっかりと括られている。
「抵抗されるとさ、逆に熱くなるものじゃない?」
「あ……ぅ…ッ」
弟の白く長い指が自分の上着を放りシャツの釦を外していく。それを止める事も出来ずにいると、自らの肌が見え始め酷く卑猥な光景になった。晒された肌を掌が這い胸の突起を摘み捏ねる様に弄う。体験した事の無い刺激に思わず声が漏れそうになった。が、シーツに顔を埋めて歯を食いしばり何とか耐えた。
「声、出したらいいのに」
「おれ、は…男だぞ…!」
「うん。知ってるよ」
「きょう、だい…なのに―――」
「うん。だから、愛してる」
「ッアァ!」
口元が油断していた隙に下肢を強く握られ喘いだ。急激に熱が其処へと集中し出し、それを見られまいと身を捩った。目敏く気付いた彼がにこりと笑って耳元にキスをしてくる。
「感じてるの?兄さん」
「ち、違う」
「嘘つくなんて、酷いな」
唾液に濡れた首筋が空気に敏感になる。反論する余地も無く既に流され始めている自分に気が付く。弟がズボンに手を掛け、じわじわと押し寄せる快楽に耐える自分をじっと眺めていた。
全身に愛撫が施されていく。
舌の生温かい感触は全身に回り、性感帯や性器へは直接彼の指が絡みついた。彼からの扱いは存外丁寧で、いっそ部屋中に転がる無残な人形の様に扱われたならこの形容し難い罪悪感は湧かなかったかも知れない。抵抗しなければならないと意識が叫ぶが身体は震えて言う事を聞かなかった。
「……ッア、…ふ…」
今の自分の性器は弟の口の中だ。口淫を施されている其処は先程から卑猥な湿った音をたてている。押し返そうと彼の髪を掴んだ手は、ソコへ押しつけるような形になってしまっていた。掴まれ、吸われ、滑るソコへの出入りが意識を持って行きそうに引っ張っていく。
「う、…あ、あぁ…あつ、い…ンッ」
太腿が落ち着かない。足を閉じようとしても間に入った身体がそれを許さなかった。
「ほら、良くシて欲しいなら足を開かなきゃ」
くすくすと笑う声。自分の抵抗も、彼の言葉も結局は無意味だ。最終的には否応なく両足首を掴まれ押し広げられる。弟に愛撫をされ反応している自分の浅ましさに羞恥で顔が火の様だった。下半身が持ち上がった為、溢れた液体が後ろの孔へと流れつく。すかさず彼はそれを指で掬いくちゅくちゅと音を立てて塗りつける。
「…あ…っ…く、…も…やめ」
「いい加減、もうちょっと可愛い事言ったら?」
こんなに濡らしてるんだから、という言葉と共に不意に指が内部に侵入した。
「――ぃ、あぁッ!」
内臓を圧迫する様な息の詰まる感覚に目が見開く。
生理現象で涙まで流れた。指の一本さえここまで苦しいのかと顔を歪める。中の指は緊張して固くなったソコを解そうと徐々に動き出した。手の自由が利かない事がもどかしく、痺れる太腿をただただ耐えた
「も、いいかな」
「―――ッ!?」
指が抜け一瞬気が緩んだ。
だが直ぐに其処には熱いものが宛がわれ、指とは比べ物にならない質量のものが孔を圧迫し広げる。それは敏感になり過ぎた身体を犯そうと押し入った。
「ひ、…ぃ…ァアッ!!」
弟の性器がぐいと内壁を押し我が物顔で侵入する。濡れて十二分に解かされたそこはいとも容易くそれを許した。
「熱いね…ギルのナカは」
幾分苦しげな声が上から降ってきた。彼の顔からも汗が滴り落ちている。彼は屈んで顔に手を添えて来た。そうして貪る様にキスをして、ゆっくりと動き出す。絡んだ舌の間から淫歪な声が唾液と一緒に流れ出た。
「あ、あ…ッ――ぁあ、ふ…ぅ!」
肌のぶつかり合う音と、荒い息遣いだけが鼓膜を刺激している。
「好き、好きだよ兄さん―」
言葉が聞こえる。だが口は開いてあられも無い声を出すばかりで応えられない。
「あ…ィ、ク…っん!」
「うん、イって?」
彼の動く速さが上がり、片方の手が白濁した液を滴らせる性器を抜き出した。一気に上り詰めらされる。
「ぁ…あ、や……あっ…――ぁああッ!」
「――ッ」
互いの中と腹へ欲を吐きだした。弛緩した身体がベッドに沈む。意識はあったが混濁し、視界はおぼろげになりつつあった。手首の戒めが解かれるのを遠くに感じた。解放され投げ出した手首にはその痕がくっきりと残っている。ぼんやり眺めていると、額に貼り付いた髪をそっと除けられた。
「愛してるんだよ、ギル」
先程までのは虚勢だったのか。何処か陰ったオッドアイが此方を見つめている。
「僕は兄さんしか、愛せないんだから」
(――嗚呼)
この弟は。ヴィンセントという男は、何と愚かな生き物かと思った。その生き物を受け入れた自分はそれ以上の愚か者だとも。未だに痺れの残る腕を持ち上げる。呆けた様な顔をしたその男の首に手を回した。そうして引き寄せれば彼は素直に身体を預けて来る。眠りに落ちる寸前、肩口にその頭を抱きながら、その耳元に囁いた。
「 」
哀れな弟に、愚かな兄は優しく残酷な嘘をつく。
あの人形の様に壊れてしまえば、貴方も私も楽だったのに。
【アラベスク】
*ルーファス×ブレイク
*2より
『その箱』に触れてはいけません
『その箱』を開けてはいけません
『その箱』を覗いてはいけません
これは『忠告』。
蜜の味に溺れたが最期、二度と戻っては来れません
【パンドラの箱】1―open―
夜も更けた頃。
街灯に照らされる石畳の街を歩けばそこらに散らばる紙に目が留まった。
『―街は鮮やかな極彩色にまみれて狂い、人々は甘美な歓喜と恍惚に酔いて溺れます。今宵は華やかなるカーニバル♪現は忘却の彼方へ捨て、夢の中で舞いましょう?』
「ご機嫌麗しゅう、侯爵殿?」
手にしたチラシから視線を上げれば目深に帽子を被る男が一人、すぐ目の前に立っていた。
「…汝も暇人じゃの。帽子屋よ」
手にした紙切れを指から放せばふわりと舞い相手の足元に落ちた。それを摘みあげた彼が嗤う。
「意外ですネ。こんなものに興味がおありだったとは」
「ぬかせ、邪魔なゴミを拾ったまでの事」
先日より街を賑わせているのは旅のサーカス団。陰鬱な話の多いこのご時世からか、特に子供のいる家庭はこぞって出掛けている様だ。
「貴殿も偶には知性の渦から離れ、感性を刺激されては?」
「ふん、策士がよく言ったものよ」
男は背の高い帽子を取り、晒した顔に満面の笑みを湛えた。白髪が冷えた風を受けて揺れる。
「なかなか面会が叶いませんので、要らぬ心配をしました」
皮肉だ。
「そのまま死んだと思っておれば手間が省けたが、残念な事よの」
「お元気そうでなによりデスヨ…バルマ公」
一つしかない朱い目が、真っ直ぐこちらに視線を上げた。
「まことピエロに相応しき男よ。今夜の舞台には上がらぬのか?」
「生憎、老体には少々堪えますので控えさせて頂いております」
冷笑に次ぐ冷笑の不毛なやりとりもそろそろ終止符を打ちたい所だ。思考を巡らした所で一つの戯れを思いつく。
「…時に帽子屋よ、そなた己のチェインの名の由来を知っておるか」
「『マッドハッター』のですか?…いえ特には」
「…場所を変える。ついて来い」
気付けば雪が舞い始めていた。
外套を翻し歩きながら、背後に続く彼の足音を聞く。人気の無い道に二人の足音が静かに響き、吐いた息の白さはより寒さを実感させた。
「その昔、帽子のフェルト加工には水銀が使われておってな職人達はその蒸気を日常に吸入しておったのだ」
「…ほう?」
「その内体内に蓄積した水銀は神経障害を引き起こし、乱視や錯乱した発言行為・幻覚を引き起こした。当時の事実を知らぬ一般人には『狂気』としか映らなかった様じゃ。これが『Mad-Hatter』たる由縁よ」
「そうデスカ」
事も無げに応える声を振り返る。
先程までいた煉瓦と石畳の住宅街抜け、更に人気の無い屋敷の前まで来ていた。二つの門燈が互いの顔を仄かに照らす。
「ここは」
「我の屋敷だ。入れ」
「何故」
元よりあった警戒心がより強くなった。大方予想通りの反応に口の端が引き上がる。
「今宵は皆が幻想に溺れる日…興じてやるのも悪くはなかろう」
「ワタシを招く理由を伺いたい」
穏やかな声音に苛立ちが混じる。苦笑を零しながら扇を取り出し広げて見せた。
「そう毛を逆立てずともよい。単なる暇つぶしじゃて」
「…貴方のそういう言葉は信用なりませんネ」
肩に積もり始めた雪を払いながら彼は言う。愉快で堪らない気持ちを抑え、目の前まで歩み寄った。訝しげに視線を上げかけた彼の心臓を扇の先でトンと突く。
「何を、」
「汝は叩けば幾らでも埃が出そうじゃの?」
ドクン、と震える鼓動が手の内に伝わり動揺を知る。
「幻覚にもまどえぬ哀れな羊がまた一匹か、楽になれ」
「――ッ!?」
脇を抜け、頸部に手刀を見舞う。
彼は一瞬目を見開いて震え、直ぐにふっと眼を閉じた。意識を失った身体は糸の切れた人形の様に崩れて落る。足元に転がるそれを見下ろし嗤った。
「喜べ。汝を今宵の余興に据えてやろう」
【パンラの箱】1―open―
『その箱』に触れてはいけません
『その箱』を開けてはいけません
『その箱』を覗いてはいけません
これは『警告』。
蜜の味に溺れたが最期、二度と戻っては来れません
*ルーファス×ブレイク
*暴力表現注意
『その耀』を求めてはいけません
『その耀』に触れてはいけません
『その耀』を覗いてはいけません
これは『懺悔』。
貴方と出会ったその瞬間、それは貴方を殺すでしょう
【パンドラの箱】2―growth―
白が世界を覆う頃。
人々は例外なく黒の揺り籠で夢を見る。それは私達を時に優しく、時に恐怖に包み込み目を閉じればすぐ「あちら」の住人が歓迎の歌を謳いだす。
『ようこそ貴方の夢の世界へ。
此処は貴方を現の世から解き放ち、未知の世界へ誘うでしょう。
その世界は溶かしたチョコレートの様に甘い香り?
それとも喰われ腐った死骸の匂い?
さあさ、早く私に教えて頂戴な』
「…ぅ」
噎せ返る程の甘い香りに目を覚ます。
痛む首筋に手をあてつつ記憶の糸を手繰り寄せた。
(…此処は何所ですかね)
暗くて何も見えないが、先程までは外にいた筈だ。
そう、赤毛の公爵と共に。
「何処です?バルマ公」
途端、静かな問いに応える様に室内に明りが灯った。灯った明りは部屋のあちら此方に置かれた蝋燭の物だがそれらに照らされた世界は、まさに『おもちゃ箱』と言えた。色とりどりの菓子を散りばめた様な色彩の世界が其処には在った。
「これは―」
「懐かしいか?」
目を瞠る彼の前に現れたのは今宵の饗宴の主催者。
長い赤髪を揺らしながら扇で口元を隠しつつ目の前に降り立った。
「ほう、まだ元気そうじゃの」
「…何の話です」
意外そうな表情を浮かべる彼の意図を計りかねいぶかしむ。そんな自分の様子も計算の内か、彼は苦笑を零した。
「まぁそう急くな。種を明かすにはまだ早かろう」
「――ッ!?」
突如後胸部に衝撃を覚えたかと思うと胸倉を掴まれベッドの上へ放られた。スプリングに身体が弾む。
「…は、…あっ」
背中への衝撃に息が詰まり、呼吸を整えようとした所へ黒い影が落ちた。のしかかる男の髪が頬に触れる。言い知れぬ恐怖にぞわり、と鳥肌が立った。
「どうした?何時もの汝なら避けられたであろう」
笑う声が上から降り注ぎ、言われて自身の異常に気付く。先程の衝撃にしても普段此処まで肺が痛む事は無い。攻撃を加えられたとて何時もなら容易く避けられたはずだ。
「…何をしたんです?」
「心外じゃのう、折角もてなしている客人から疑われるとは」
何所がもてなしているのかと言い返そうと口を開きかけそれも無駄と判断し黙る。
「…威勢の無い汝はつまらんな」
肌に触れる空気がざわめいた。
「こんな『もてなし』はどうじゃ?」
頭をもたげれば視界に入る複数の人影。部屋に現われたのはかつて仕えたシンクレアの一族だ。
「な、…ッ!」
「懐かしき再会を喜べ、帽子屋」
その口端が引き上がり、彼の背後に破裂音が響き渡った。
「ぅ……がはっ、…っ」
ごぷ、と言う嫌な音と共に口から鮮血が溢れ出る。二人の鼻孔を鉄の匂いが充満した。
「またか…汝は余程眠りたくないものとみえる」
ルーファスは背後で砂塵と化した自らの幻覚と目の前で血を吐く男を半ば呆れ顔で見やった。
「それほど夢を見たくなくば、気の済むまで己の『痛み』と向き合うがいい」
「――ッ!」
血に汚れた白い顔を鈍い音が打った。真白いシーツに鮮血が舞う。
「感謝せよ。汝の望みを叶えてやろうと言うのだからな」
「ふ…ざけた事、をッ」
再びこの部屋に似つかわしくない音が響く。頬の皮膚が裂け滴る血が一層その染みを濃くした。
「あまり殴らせるな帽子屋よ。殺すにはまだ惜しいでの」
白々しい言葉は当人に届いていたのか。殴られ横を向いたまま僅かに身体を震わせるばかりで言葉は返ってこなかった。それを見て胸元までのスカーフを引きちぎるように剥ぎ取り空いたシャツの間から白い首筋に舌を這わせた。びくりと震えるその身体を嗤いながら顎を持ち上げ紅い瞳に無理矢理視線を合わさせた。
「汝が正気を無くす前に教えてやろう…始めにその身の自由を奪ったのは睡眠剤とこの『水銀』」
取りだした小瓶に震えが一瞬大きくなった。
「と言ってもごく微量だが、それに此方も微量の阿片を混ぜた物だ。ホンモノの『いかれ帽子屋』にしてやろうかと思ったがそれでは我の欲しいモノが手に入らなくなるのでな」
液体の揺れる小瓶を翳しながら世間話でもするように淡々と彼は語った。彼の下で震えていた身体は次第に熱い息を零し始めていた。赤に汚れた髪を除け、滑らかな感触を味わうように手を滑らせる。
「…っ…、」
何かに耐える様に唇を噛み締めるその顔の横に手を突き体重をかければ、ぎしりとベッドの軋む音が鳴る。恐らくまだ一時的なものであろうが、水銀と阿片の作用か紅い瞳は焦点が揺らいでいた。シャツの釦を一つ一つ外していき身長の割に華奢な身体を背に腕を回して引き寄せる。胸の突起を口に含めば大袈裟な程にそれは跳ねた。
「……ぁ!!…や、め…!」
肩まで剥き出しになった腕が被さる身体を押し退けようと力を込めてくるが効果は無かった。空いた手に下肢を触れられた瞬間押していたその肩を逆に掴む形になる。伸ばされた手はスラックスの上からその形をなぞる様に触れた後、急激に力を込めてソレを握り込んだ。
「ひっ、ぁあ…!」
身体が弓なりに反り額の雫が飛んだ。
抵抗するのも構わずルーファスは衣服の中に手を滑り込ませ直に彼自身に触れる。そこは彼の意思とは関係無く、既に濡れ始めていた。
「傷め付けられるのが好きか?」
揶揄するよう問いに彼は俯きながら首を振る。
「強情な事だ」
下肢に絡まる衣服を一気に剥ぎ取った。未だ着たままの上着の間から覗く其処に制服感と高まる興奮を覚えながら両の足を掴み押し広げる。大した力は無いが、それでも暴れる足を押さえつけその胎に指を捻じ込む。普段そんな刺激の無い所故か、彼は悲鳴を上げた。
「あ”ぁ・・・・・ッ!!」
掠れた声と唾液と共に流れる血。
「いたっ、い…!痛…」
「痛みを感じる余裕が有るなら、少しは可愛げの有る事を言ったらどうじゃ」
乾いていたナカは粘着質な物に潤い、ルーファスの指に絡みだす。挿入が滑らかになりその動きは速さを増した。苦痛を訴えていた唇は艶めいた言葉にならない声を発しその手は肌が白くなるほど固くシーツを握り込んでいた。湿った音が暫く室内に聞こえた後、ずるりと濡れた指を抜き出す。白濁とした液体の流れる其処に欲に猛った物をあてがう。それまでひたすら痛みと快楽に耐えていた身体がその感触に僅かに正気を取り戻した。
「・・い、やだ…!…や、め…!!」
迫る身体を押し返そうと手を伸ばすがやはりそれも無駄に終わる。
「ひ、ッ!!」
声にならない悲鳴が響く。見開いたその紅い瞳からは涙が零れた。震えながら抵抗する身体を揺さぶり何度も犯す。時折胸を弄い、鎖骨に歯を立てれば彼の中はきつく締めつけてきた。抉る様に強く前立腺を刺激すれば卑猥な音と共に限界が来る。
「あ、ぁッ……い…!!」
どくん、と心臓が跳ねると同時に熱が体内へ吐きだされ、そして彼もまた相手の腹へとその欲を吐き出した。
「あ…くッ、…」
濡れた内股を震わせ、彼は過呼吸を起こした。白い髪は汗で額に貼りつき体温は熱いままにその肌は蒼白になる。自身で収集がつけられないのか上手く酸素を取り込めずにいるその唇を、ルーファスは自分のそれで塞いだ。
「ん”、…ふ、ぁ……ッ」
自分で吐いた息を吸わせ呼吸を落ち着かせる。軽いパニック症状と抵抗する意思で初めは暴れた手足も徐々にそれを弛めていった。
「……眠ったか」
呼吸が落ち着くと彼はそのまま意識を手放した。微動だにせずベッドに沈むように眠る乱れた身体にシーツを投げかける。其処は極彩色の部屋ではなく簡素な一室と化していた。錆びたノブに手を掛け外へ出る。廊下に靴音を響かせ歩きながら手の甲で唇を拭った。
「我もとんだお人好しさんじゃのう」
塞いだ唇は鉄と塩の味がした。
【パンドラの箱】2―growth―
*ルーファス×ブレイク
*ブレシャロ要素アリ
喜劇の「幕開け」は貴方の嘆き
悲劇の「幕引き」は愛しみの心
さあ、真っ赤な舞台にカーテンコールを
【パンドラの箱】3―intermezzo―
目に映るのは天井らしき白い影。
霞んだ意識の中でもそれだけは理解出来た。
「あぁ…」
そうでした、と柔らかいシーツの上に手を沈めて上体を起こし、白い足の間に伝うぬめりに顔を顰めた。申し訳程度に肩に掛かっていたシーツが滑り落ち改めて自分の汚れた身体が目に入る。昨晩に切れて血の固まった唇を指先で拭いながら辺りを見回すが目当ての人物は其処には居なかった。
「やり逃げですか…どっちがピエロだか」
共に朝を迎えるのは鳥肌物だが、それでもやはり逃げたと言う事実に苛立ちを禁じえない。皺だらけのシャツを拾い上げ、軋む床に足を降ろした。
「お帰りなさいブレイク」
邸に戻るとすぐに小柄な少女が出迎えた。
彼女は駆け寄りながら何処へ行っていたのかと尋ねる。
「よろしくありませんわよ、朝帰りなんて」
「…ワタシは女性では無いのでいいんデス。少々調べ物を」
濁した答えに笑顔から一転、いぶかしむ表情になってしまった。外套を脱ぎかけていた手が止まる。
「シャロン」
「本当に?」
下から見上げてくる視線は真っ直ぐだ。文字通り射抜かれた様に身動きがとれなくなってしまう。
「ええ。本当、ですよ」
ぎこちない声だ。これでは嘘を肯定しているに等しい。一人内心で焦っていると小さな手が目の前に現れた。真っ直ぐに現れたそれはふっと折れて指先が唇の傷に触れる。瞬間、走った痛みに眉をひそめた。
「痛みますか?」
「…ええ、そうですね」
怒るでもなく、ともすれば無感情にも聞こえる静かな声で訊かれれば、意識よりも遠い所から答えてしまっていた。
「いつもの事ですけど、貴方は無理をし過ぎます」
「オヤ、心配して下さるんですか?」
「あ、当たり前です!」
茶化したつもりはないが、白い頬を真っ赤に染める少女に愛おしさが込みあげる。その瞳はもう外見通りの幼い少女の物ではない。
「ありがとう、シャロン」
掬った小さなその手にキスを。先ほどとは違った意味で急激に真っ赤になった彼女を穏やかな瞳で見つめ「それでは」、と踵を返す。
「あ、…ブレイク!」
背に掛けられた声には、ひらひらと手を振って返した。
(女性の勘と言うのは本当に恐ろしいデスネ)
足早に辿り着いた部屋で、戸に背を預けて思う。
「…ですが、」
勘は確かに恐ろしい。だがそれ以上にそれは尊い。
あの許しが無ければ恐らく今を生きる事は叶わなだろうから。
(流石に、今回は言えませんけどネ)
あの少女は自分の光だ。
そんな彼女にこんな薄汚れた話など聞かせたくなど無い。苦笑と共に適当に衣服を放り浴室へ向かう。等身の鏡に映った身体はこの上なく醜かった。何時付けられたのか、首筋、鎖骨、太ももと何か執着を表す様に紅い痕が付けられている。
「…あのアホ毛侯爵め」
首筋に至っては制服の襟でもギリギリ隠れない顎のラインの近くに付けられていた。兎に角内部に残った跡を流そうとシャワーの蛇口を捻り出始めの冷たい水を被る。濡れて重くなった髪が、徐々に徐々に視界を遮っていった。
(嗚呼、何て無様なんでしょうね)
閉じられたカーテンの向こうに出る事は、まだ当分に出来ない様だ。
氷の様な水が温かくなるには、まだ時間がかかりそうだった。
【パンドラの箱】―intermezzo―
閉じた舞台の主催者は、拍手で役者を出迎える