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- 2026/01/22(木) 07:04:09|
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*ブレイク×ギルバート
*オズ生還前
欲しいのは主と慕うあの人
求めるのは道化師と呼ばれるその人
全てが曖昧な境界線
【Absurdity】
ザァザァと落ち、流れる水を朧な意識で眺める。シャワーの水に混じるのは詳しい素性も知れぬ男の欲。
「……」
鏡に映る身体には所々鬱血した跡が残っていた。
「彼」は濡れて張り付いた黒髪をかきあげ、
そこに新たな跡を見つけてひとつ溜息をついた。
「お帰りなさい、レイヴン」
部屋に戻ると、一体何時来たのか白髪のピエロがにこりと笑い彼を出迎えた。
「…何しに来た」
「オヤ、冷たいデスネー。折角愛しい君に会いに来たのに」
ブレイク悲しい!と肩に乗った不気味な人形に彼は話しかける。
「気色の悪い事を言うな、ピエロめ」
何度したやり取りか知れないが同じ感想を抱かずにはいられない。こちらの機嫌が悪いのを見計らったように現れては調子のいい事を言いかき乱して帰っていくのだ。
「失礼ですネ。道化師とは人に夢を見せる尊い存在ですヨ?」
「残念だが訂正する。道化師は人を惑わす存在だ」
ソファに沈みむくれる彼にぴしゃりと跳ね返す。
「いやぁ、実に機嫌が悪いですネェ今日の君は」
ブレイクは肩を震わして笑った。残念ながら彼の言う事は当たっている。冷静に饒舌な時、確かに自分は機嫌が悪い。そんな自分に対し彼は酷く機嫌が良いようだった。
「それで?」
座った彼に腕を引かれる。
「そんな不機嫌な鴉は何を御所望なんだい?」
覗き込む紅い瞳へ、口の端を引き上げ言葉を紡いだ。
「…『夢』を」
部屋の明かりを消し深くソファに座るブレイクに歩み寄る。
伸ばされた腕をすり抜けその首に抱きついた。意外だという雰囲気が伝わってくるが気になどしない。まだ湿った状態の黒髪を男の肌に擦り寄せた。縋りつくようにしてブレイクの服を握りしめる。
「…鴉は肉食でしたっけ」
「?」
彼がそう呟いたかと思うと、腰を引かれ膝の上に座らされた。
『今宵鴉は道化師に喰われ夢を見る―』
「……ッ」
鼓膜に囁き声を感じた瞬間、ブレイクは鎖骨の辺りまで開いていたシャツの隙間に顔を埋め微かに上気した肌に舌を這わせた。肌に吐息を感じる距離で更に言葉は続く。
『それは都の垢に塗れた黒の世界ではなく、甘美に満ちた世界で』
薄く笑うブレイクと視線が合う。
「『例えばそれは』・・・こんな色だったりしませんカ?」
紅い目を指し彼は笑う。
「は、馬鹿を言うな」
「…夢が欲しいならもう少し素直になったらどうデス」
そう呟くブレイクのスカーフを強く引いた。揺らいだ彼の白髪が振れ、目蓋にかかる。
「それはお前が『見せる』んだろう?」
目の前に来た紅を金の瞳が捉えた。
「現を意識させるな」
音にした言葉は思いの外苦しげなものだった。ブレイクの首に絡めた腕に力を込め、その乾いた唇に自ら己のそれを重ね舌を絡めて互いの酸素を奪い合う。
「…、今夜は随分煽ってくれますネェ鴉?」
「いい加減名前で呼べ、ブレイク」
「…鴉に夢を見させなくていいんデスカ?」
「鴉は俺の名前じゃない」
ナルホド。とでも言いたげな顔で、彼は納得したのかようやくその名を口にした。
「では、ギルバート」
「何だ」
「君は、どうして欲しいのですか」
薄い唇に細く長い指が添えられ、道化師が誘惑を囁く。
「抱いてくれ」
「仰せのままに、ギルバート様」
彼が恭しくこの手を取る。鼓膜に響く言葉を感じながら、静かに目を閉じた。
夢を抱き続ける為に、夢を見させて
【Absurdity】