[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- 2026/01/22(木) 05:28:57|
- |
- トラックバック(-) |
- コメント(-)
| 12 | 2026/01 | 02 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | ||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
| 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
| 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*ブレイク目線。
「よく見ている」モノって、案外「見えていない」ものなのですよ
【Impulse】
私は「目覚めた」はずだった。
だが、色が、光が、認識されない。
「―何を寝ぼけている?」
嗚呼、やはりワタシは、「目覚めて」いるのですね―
シーツに包まりながら複数の退室する足音を聞く。
その中で一人だけ、部屋に留まった者がいた。
「おや、…君にバレるとは思いませんでしたヨ」
「・・・・・・」
「ねぇ、―レイムさん」
近づく足音は、確かに耳に馴染んだ彼のものだ。
ベッドの端が沈む。彼が座ったのか。
「ザクス」
「――?」
懐かしい呼び名。だが彼が何をしているのか、解らない。
「・・・本当に・・・視えていないのか・・・?」
(嗚呼、確かめていたのですね)
苦しそうな声。
ワタシはただ、苦笑する他無かった。
「その様ですネ」
「…そうか…」
「何、泣いてるんデス」
「泣いてない…」
「嘘おっしゃい」
彼の方へ手を伸ばす。が、少しずれたらしい。
耳元を掠めて髪に触れる感触がした。
触れた位置を頼りに、指先でその顔を柔くなぞる様にして彼に触れる。
レイムは黙ったまま目を閉じた。
(耳…頬、…鼻…あ、)
目蓋に触れた。少しだけ下にずらせば
指先に触れる温かい水滴の感触。
「ほら、言った通りデショウ」
「・・・・・・すまない・・・」
「何故謝るんですか」
彼は答えない。
けれどその答えは解りきっている事。
―本当に泣きたいのは、お前のはずだから
優しい彼は、きっとそう思っている。
温かい涙がその証拠。
雫の温もりを感じていた手は、彼の手によって包まれてしまった。
「…ワタシの寿命は、本当に残り少ないという事なのでしょうね」
「ザクス、」
「大丈夫ですヨ。投げやりになった訳じゃありませんカラ」
包む手をそっと外してばさりとシーツを頭から被り直す。
目元は隠し、再びレイムと向いあった。
「訊いてもいいデスカ?」
「…あぁ」
「貴方の瞳は、何色でしたかネェ」
「…は?」
「貴方の髪は、肌は…、身長は…これぐらいでしたっけ」
斜め上に首を上げてみる。
確かこれくらいの所に彼の顔はあったはずだ。
「ザクス」
「教えて下さい、レイムさん。覚えておきたいんですよ」
(ああ、いけませんネ)
喉の奥がひりひりする。
目の奥が熱い。
自分はちゃんと笑えているだろうか。
シーツを寄せる指が震えていた。
「…馬鹿が」
「――ッ」
シーツがむしり取られた。
「泣きたかったら、最初から素直に泣いたらどうだ」
目じりを拭われて、初めて気づいた。
首元に彼が腕を回して抱きしめられる。
その肩からは微かな振動が伝わって来ていた。
「貴方は、少々優し過ぎますヨ。レイムさん」
「うるさい。もう、黙ってろ…」
語尾が小さくなっていく彼の声にこの上ない愛しさを感じながら、
私はその優しい背を抱きしめていた。
きっと、きっと視えなくて悲しいのは今だけ。
だって今ほど、貴方を意識した事は無いのですから。
【Impluse】
*レイム→←ブレイク
*・流血表現アリ
爆ぜる高い金属音。
―硝子が割れた音―
違う、これは
『関係』が、壊れた音。
【fri-End-s】
「「カシャン」」
思わず肩を竦めたくなるような音が部屋に響いた。
「…何をやっているんだ貴様は」
「イエ、ちょっと目測を誤りまして」
今しがた入室した所の彼から指摘されたのは床へ放りだされたグラスの残骸だ。
ベッドの上から机に立て掛けてあった気がしたステッキを取ろうと手を伸ばしたところ、誤って置いてあったグラスに手を引っ掛けた。
幸い空だったものの当のグラスは見る影もない。
「だから慣れんうちは大人しくしておけと…」
「まあまあ、全盲では無い訳ですカラ」
床に転がる破片を拾おうとした所でレイムが駆け寄り、その手を取られた。
「阿呆かお前は。見えていない人間が触るな」
「…。皆さん過保護過ぎやしませんか?」
いいから、とベッドの上へ押し返され仕方なく手を引っ込めた。
両目が殆んどの視力を失うと言うのはいくら感覚が優れていたとてやはり不便な様だ。
「……」
カチャカチャという音を耳にしながら天井を仰ぐ。
申し訳ないとは思っているがこうしているより他にどうしようもない。
(どんな顔してますかネ)
見てやろうと思って起き上がりかけたが、ああ。そうでした、と思い直しベッドに沈む。
「何してるんだ」
「何でもないデスヨー」
気付いた彼がこちらを向く。が、軽く流す。
枕に顔を埋めて黙秘を決め込んだ。
「おいザクス――あぁ、切った」
「へ?」
レイムの一言にぱちっと目が開いた。
がばと起き上がって彼の手に触れるとぬるりとした液体。
手に持っていた破片で切ったらしい。
彼はポケットからハンカチを取り出した。
「大丈夫ですか」
「別にこれくらいは…いや、少し深かったか」
思いの外出血が多いらしい。
押さえる白い布がどんどん赤く染まっていった。
「…ザクス」
「?」
ボスンとシーツに沈む身体。
上から覆い被さってくる友人は指から
流れる血をシーツとブレイクの肌に滴らせながらその唇へ指を突き付けた。
「何です」
「お前の責任だろう」
「…え、ちょ」
「いいから」
あくまでも静かな声に、俄かに戦慄が走る。
仕方なく小さく舌を出して傷口をなぞった。
身体に返り血を浴びるよりも鮮明な鉄の味が口の中を染み渡り味覚を支配した。
「…、ふっ…ぅ」
その行為を続けていれば、唾液が溢れ始める。
血と混じったそれが糸を引きながらシーツに落ち、中心の赤い染みを作っていった。
彼の指が灯りに反射し何処か卑猥に光って見えた。
その指は舌の性感帯を刺激する様により奥へと侵入する。
「ッ…」
「唾液には消毒作用が有るらしいな」
息が苦しくなったが彼はそれに構う気は無いらしい。
いい加減口も疲れ、堪らず顔を逸らした。
噎せながら恨めし気に相手を見た、筈だったが彼は視界から消えていた。
「!」
唇に触れる柔い感触に驚き思わず身体が強張る。
消えたのではなく、近すぎて見えなかったのだ。
強く体重を掛けられたベッドが大きく軋む。
重なったその二つからは湿った音がし、鼓膜を刺激した。
「ン、…ッ…!」
突如向けられた下肢への刺激に心臓が高鳴った。
焦らす様に触れられる其処に意識が集中する。
開いている手で縋る様にレイムの腕を掴んだ。
「す、ストッ」
「止めていいのか?」
吐く息が荒くなる。
乱れた髪が肌に張り付き鬱陶しいと思った。
その間も彼の手は動きを止めない。
更に暫くするとその手は衣服に侵入し直に触れた。
「――ッ!?」
直接的な刺激に全身が震えあがる。
一気に火照り出した身体に汗が滲み始めた。
先程の緩い刺激とは違い強く扱きだす。
「…レイ、ムさ、…アッ…!」
太腿が痙攣し全身が心臓の様に一つ脈打つと弛緩した身体が彼の腕を離れた。
ベッドの浮き上がる感覚に覚醒する。
朧な視界の中に男の背中が映っていた。
「何処行くんデス」
「あぁ、ガラスを捨てに」
レイムが手にした袋の中で、カシャンと音が鳴る。
彼はそのまま扉の向こうへ姿を消した。
一人残った部屋で綺麗に直された衣服に気付く。
絨毯の上に、小さな硝子の破片が光って見えた。
「…バカですね…」
彼も、自分も。
ホントの事は何も言えない。
【fri-End-s】―end―
あの時切れたのは『友人』と、いうコトバ。
*レイム×ブレイク
『幸福』とは貴方と共に生きる事
『幸福』とは貴方より先に逝く事
【花葬】
皆が幾ら慌ただしく働けど、季節は滞りなく廻って来る。
真白かった窓の外は知らぬ内に優しい色彩に姿を変えていた。
「良い日和だな」
温かい光の注ぐ廊下を闊歩しながら窓の外を見上げる。
下界の喧騒を微塵も感じさせない程に遥か上空は穏やかだった。
ポケットから懐中時計を取りだし時間を確認する。
(11時・・・47分)
そろそろこの忌まわしき書類を置いて昼にでもしようか。
書斎に戻ると午前の仕事分であった束を置き、本を一冊と昼食を手に部屋を出た。
ざわさわ、ざわざわ
春の風はほんの数分前より少しばかり強く花々を揺らし始めていた。
今目の前にある樹齢何年とも図れぬこの桜の木も例外ではない。
だがそんな浮世に立つような気分も、すぐさま地上へ引きずり戻される。
「…おい」
太い幹に背を預け、頭を項垂れ眠る男が居た。
制服の胸元も開げて休み時間をフルに活用している事が窺える。
(まぁ、態度としては何時もこんな感じだが)
腰に手を当て溜息をつく。そんな自分の行為もいい加減見収めたい所だ。
休憩時間とは言え、今までこの男は仕事をしていたのだろか。
敏い男なので気付かない筈は無いのだが、軽く肩を揺すっても起きる気配は無い。
少し不安になって顔色を窺う。が、体調が優れない訳ではなさそうだった。
風が切り揃えられた白髪を弄い流れて行く。
叩き起こしてやろうかと思ったが、やはり止めておく事にした。
規則正しい呼吸で眠る彼の隣に腰かけ、昼食を取った。
下から見上げた快晴に艶やかな桃色の花が良く映える。
「こんな穏やかな春を迎える日が来るとは思いませんでしたネェ」
「!―ゴフッ」
今まさに口に入れたパンが喉に詰まった。
涙が滲むほど盛大に噎せた後、恨めし気に声の主を見る。
「…何時から起きていた」
「?最初からですケド」
最初とは何時の事だと口角がひくついた。
やはり自分が来る前からと言うのが正しいのだろうか。
「寝込みを襲うぐらいしないかと期待してましたが、残念デス」
「するか阿呆」
にやりと笑う彼を一蹴しながら、内心何もしなくて良かったとほっとする。
我ながら、日ごろの行いの賜物かもしれないと思った。
「次の春もこんな風だと良いですね」
「…そうだな」
静かな声音に何故か胸がざわつき、返事が遅れてしまった。
「まぁ、次はこの季節すら…という可能性もありますケド」
「馬鹿を言うな」
「解りませんよ。この木も、毎年同じだけの花が咲くとは限らない」
伏せた瞳に睫毛が影を落とした。
その表情は少し哀しげで、何処か儚く、美しいと思った。
それは決して生きる事を投げやりにしてはいないからかも知れない。
彼は落ちて来た花弁を一枚摘み、目の前で眺めた。
「散った者は帰って来ないのですよ」
「そんな事、知っている」
「いいえ、まだまだですネ」
「…仕方ないだろう」
「そう、貴方はまだ若いですから」
にこりと笑った彼はごろりと地面に横になった。
散った花弁で薄紅色の絨毯が出来ており、その上に白い髪が散らばった。
そのまま混ざり消えてしまいそうだ。
「この木は毎年どんな気持ちで彼らを見送るのでしょうね」
「さぁな」
「……ちゃんと考えてます?」
「哲学的な事は解らん」
「私だって知りませんよ。感覚的な問題です」
不満げな彼に同じ返事を返して手元の本を開く。
が、しおりを取った途端に吹いた風でページがばらばらとめくれた。
読みかけのページが解らなくなってしまった。
「…」
「…バチですね、罰が当たったんですヨ。きっと」
くつくつという笑い声が下からする。
敢えてそちらは見ない様にして、本を閉じて立ち上がった。
「…行くぞ。そろそろ仕事だ」
「はいはい」
如何にも重い腰を上げた彼は髪についた花弁をばさばさと払い落とした。
先に歩き出しながら彼がついてくるのを耳で確認する。
「ザクス」
「はい?」
「多分、アレは悲しんではいないだろう…また会えると、分かっているからな」
「?」
「さっきの返事だ」
「――ええ、そうですね」
大した答えは出せなかったが、それでも満足気な声がした。
背中を押す強い風は、多くの死を巻き込んでこの生活を満たしている。
明日もまた多くの花が愛でられながら散って逝くのだろう。
「レイムさん、私桜餅が食べたいデス」
「・・・そこら辺の花びらでも拾って食ってろ」
【花葬】
*レイム×ブレイク
*
花を裏切り縁を結ぶ
【花冷え】
色様々な草花が咲き乱れ始める頃、ふらりとそれはやってくる。
「冷えますネェ」
「春だからな」
空は快晴。
室内から眺める分には外は実に暖かな陽気に満たされている様である。
だが花を揺らす風はさぞや冷たかろう。屋内で寒気がするのがその理由だ。
「…何かおかしくないですカ?」
「この季節は気候が安定しないから道理だという意味だ」
「あぁ…、ナルホド」
しかし毎年こうでは花も難儀なものだと想いながら、山積みの書類に目を戻した。
夕刻。
日が傾きかけた頃に一日の仕事を終える。
「レイムさん」
先行してすたすたと歩く友人を呼び止める。規則正しい靴音がぴたりとやんだ。
「何だ?」
「ちょっと、お茶でもして行きませんか」
彼は少し意外そうな顔をした後、頷いてついて来た。
茜に染まる廊下を二人言葉少なに歩くけば、沈黙も苦痛では無くむしろ空気を
穏やかなものにさせていた。誘う先は自分の部屋である。
他意は無い。何となく、彼と温かい紅茶でも飲みたい気分だったのだ。
淹れたての紅茶の香りと甘い茶菓の間で話題は仕事話から世間話と尽きない。
彼を誘ったのはやはり正解だったと言う事だろう。
「そう言えば今朝の話ですケド、花とは難儀な物だと思いません?」
「何だ、まだ覚えていたのか」
「良いじゃないですか。ねぇ、思いませんか」
「…人から見ればまぁそうだろうが、花は知らない環境とは比較せんからな」
「ふーむ、確かにそうなんですケドね」
彼の性格からすれば予想のつく反応だが、いまいち夢が無い。
そろそろ夕日も沈み、部屋が藍色になりつつある。部屋も冷えて来た。
「寒いデス」
「そうか」
酷い反応だ。この瞬間舞っている花弁はさながら吹雪の氷塊になった事だろう。
「お。見ろ、もう月が出てるぞ」
「へー」
ぐでっとテーブルに突っ伏しお返しとばかりの返事をする。
立ち上がった彼は窓辺に行くかと思いきや、部屋の蝋燭を消して回り始めた。
徐々に徐々に部屋が暗くなる。だがそれにつれ夜空の月は明瞭な姿を現した。
「空気が冷えていると綺麗に見えると言うのは何故だろうな」
「知りませんヨ」
彼は窓の外を興味深げに眺めている。その背に背を向け微量の月明かりを反射して揺れるカップの中身を見つめた。するとその反射がふと無くなる。
「―白いな」
「ッ!」
吐息の触れた項に思わず手をやる。
振り向けば逆光で良く見えないが、困った様に微笑んでいる姿が浮かんだ。
「何してるんですか変態」
「それは、残念だがお前には負ける」
月明かりで青鈍色になった部屋の中で、レイムの冷えた指が首筋を撫でた。
詰めた制服の釦が外されると項に空間が生まれ襟を後ろに引かれる。
開いた空間から覗いた肩口に顔を埋められると肌が泡立つ感覚を覚えた。
「白い、のは・・月の所為では?」
「かもな。だがそれでも白い」
生温かい感触が肌を伝う。濡れた首筋に髪が貼りついた。
そこから熱が広がっていくのを感じる。
視線を月が照らす床へと流し、この先の事を意識すまいと平静を装った。
長年の友人にそれは隠しきれないだろうがその辺は此方のプライドもある。
「レイムさん」
「何だ」
「私達はまだ、『友人』なのでしょうか」
「……」
返事は返って来ない。彼は無言のまま行為を続行した。
上着が床に落ち、後ろから回された手でシャツが広げられていくのを何処か遠くに感じる。
シャツから肩が露出すると、流石に冷えた空気に震えた。
「…男性は、初めてですよ」
「それは、光栄な話だな。当然だが私もだ」
内側のざわめく胸の突起に指が触れ唇を固く閉ざす。
一方の手がズボンのジッパーに触れようとした時、その手を押さえ制止を掛けた。
「…嫌か?」
「イエ、此れでは貴方の顔が…見えないのですよ」
「何だそれは」
そう言いつつ、彼は自分がベッドへ行きたいという事を理解してくれた様だった。
改めて薄暗い天井を仰ぎ見る。
今夜は特に静かな夜だった。
などと悠長に言える状態では無いが、夢の様な現故それも致し方ないだろう。
背中に感じる柔らかな感触に安堵する。
今や彼も上着を脱ぎその息も少し荒い。
だが此方も此方で既に身につける物は白いシャツのみとなっている。
彼に与えられる刺激に僅かな恐怖を感じながらも、身体は素直に悦んだ。
視線の先には片足の膝を立てたその間で彼の頭が小さく上下している。
「…あ、ぁ…ッ」
同性とは言え、柔らかな唇の口淫には太腿が断続的な痙攣を起こした。
聞いた事の無い自分の甘ったるい喘ぎ声に耳を塞ぎたくなるが、唇を噛み締め痛いほどにシーツを握りしめる事で何とかやり過ごした。
唇から解放されると震える足首に手が掛かる。白い脚は肩まで持ち上げられた。
「平気か?」
「…えぇ、」
「力、抜いとけよ」
「ッ!」
暗闇で身体がが弧を描いた。
本来受け入れるべき器官では無い場所に彼自身が押し入り、経験の無い痛みが電流の様に全身を突き抜けた。
上った声は悲鳴に近かっただろう。
緊張した身体の中は彼をきつく締めつけた。若干苦しげな彼の声が耳に届く。
それでも彼は過呼吸気味になった自分を気遣い、他の場所へ愛撫を施し気を紛らわせた。
すると徐々に激痛は快楽へと姿を変え始める。
「ふぁ…、あぁ…ッ」
「ザクス」
「な、です」
「…愛して、いる」
表情は見えない。だが緩く微笑んんだ口元は目にすることが出来た。
熱く火照り汗ばんだ身体が更に温度を高める気がした。
(嫌ですね、少女めいた感情など)
だがここで自分もだと素直に頷いていいものか悩む。
外見こそ大差ないが自分はもう先が短い。今自分が彼を縛っていいのかと。
結局返事は出来なかった。
ただその腕を伸ばし、両手で彼の頬を包む。
驚いた様な顔をした彼を引き寄せ触れ合うだけのキスをする。
今度は切なげに眉を寄せる彼の顔が見えた気がした。
目が覚めるとまだ夜明け前だった。事の後眠ってしまっていたらしい。
月は変わりなく下界の花を照らしていた。その明りで薄っすらと見える落ち行く花が、何とも幻想的で美しい。
隣にいたはずのの彼は暗い部屋の窓辺で、庭の花を眺めていた。
手近にあったシャツを羽織りベッドから足を降ろす。腰の辺りが痛んだが、
構わず彼の許へ歩む。気付いた彼が此方を振り返り微笑んだ。
「今度は月ではなく花ですか?」
「あぁ、綺麗だったんでな」
「私の最期も、こうだといいですねぇ」
穏やかで静かに、彼の居る最期だ。
ついそんな言葉を口にしてしまい後悔する。これでは彼へ負担を掛けるだけだ。
「すみません」
「いや、」
謝罪の言葉に彼は首を横に振った。
だがもう一度窓の外で散る花を見て、彼の頬に雫が伝った。
「…すまん」
「安心なさい。まだ、死にはしませんよ」
先程までの熱はもう身体に残ってはいない。
冷えてしまった今の身体は、ただ胸の辺りだけが焼けつくように熱かった。
【花冷え】