[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
- 2026/01/22(木) 07:01:45|
- |
- トラックバック(-) |
- コメント(-)
| 12 | 2026/01 | 02 |
| S | M | T | W | T | F | S |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | ||||
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 |
| 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 |
| 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
*レイム×ブレイク
『幸福』とは貴方と共に生きる事
『幸福』とは貴方より先に逝く事
【花葬】
皆が幾ら慌ただしく働けど、季節は滞りなく廻って来る。
真白かった窓の外は知らぬ内に優しい色彩に姿を変えていた。
「良い日和だな」
温かい光の注ぐ廊下を闊歩しながら窓の外を見上げる。
下界の喧騒を微塵も感じさせない程に遥か上空は穏やかだった。
ポケットから懐中時計を取りだし時間を確認する。
(11時・・・47分)
そろそろこの忌まわしき書類を置いて昼にでもしようか。
書斎に戻ると午前の仕事分であった束を置き、本を一冊と昼食を手に部屋を出た。
ざわさわ、ざわざわ
春の風はほんの数分前より少しばかり強く花々を揺らし始めていた。
今目の前にある樹齢何年とも図れぬこの桜の木も例外ではない。
だがそんな浮世に立つような気分も、すぐさま地上へ引きずり戻される。
「…おい」
太い幹に背を預け、頭を項垂れ眠る男が居た。
制服の胸元も開げて休み時間をフルに活用している事が窺える。
(まぁ、態度としては何時もこんな感じだが)
腰に手を当て溜息をつく。そんな自分の行為もいい加減見収めたい所だ。
休憩時間とは言え、今までこの男は仕事をしていたのだろか。
敏い男なので気付かない筈は無いのだが、軽く肩を揺すっても起きる気配は無い。
少し不安になって顔色を窺う。が、体調が優れない訳ではなさそうだった。
風が切り揃えられた白髪を弄い流れて行く。
叩き起こしてやろうかと思ったが、やはり止めておく事にした。
規則正しい呼吸で眠る彼の隣に腰かけ、昼食を取った。
下から見上げた快晴に艶やかな桃色の花が良く映える。
「こんな穏やかな春を迎える日が来るとは思いませんでしたネェ」
「!―ゴフッ」
今まさに口に入れたパンが喉に詰まった。
涙が滲むほど盛大に噎せた後、恨めし気に声の主を見る。
「…何時から起きていた」
「?最初からですケド」
最初とは何時の事だと口角がひくついた。
やはり自分が来る前からと言うのが正しいのだろうか。
「寝込みを襲うぐらいしないかと期待してましたが、残念デス」
「するか阿呆」
にやりと笑う彼を一蹴しながら、内心何もしなくて良かったとほっとする。
我ながら、日ごろの行いの賜物かもしれないと思った。
「次の春もこんな風だと良いですね」
「…そうだな」
静かな声音に何故か胸がざわつき、返事が遅れてしまった。
「まぁ、次はこの季節すら…という可能性もありますケド」
「馬鹿を言うな」
「解りませんよ。この木も、毎年同じだけの花が咲くとは限らない」
伏せた瞳に睫毛が影を落とした。
その表情は少し哀しげで、何処か儚く、美しいと思った。
それは決して生きる事を投げやりにしてはいないからかも知れない。
彼は落ちて来た花弁を一枚摘み、目の前で眺めた。
「散った者は帰って来ないのですよ」
「そんな事、知っている」
「いいえ、まだまだですネ」
「…仕方ないだろう」
「そう、貴方はまだ若いですから」
にこりと笑った彼はごろりと地面に横になった。
散った花弁で薄紅色の絨毯が出来ており、その上に白い髪が散らばった。
そのまま混ざり消えてしまいそうだ。
「この木は毎年どんな気持ちで彼らを見送るのでしょうね」
「さぁな」
「……ちゃんと考えてます?」
「哲学的な事は解らん」
「私だって知りませんよ。感覚的な問題です」
不満げな彼に同じ返事を返して手元の本を開く。
が、しおりを取った途端に吹いた風でページがばらばらとめくれた。
読みかけのページが解らなくなってしまった。
「…」
「…バチですね、罰が当たったんですヨ。きっと」
くつくつという笑い声が下からする。
敢えてそちらは見ない様にして、本を閉じて立ち上がった。
「…行くぞ。そろそろ仕事だ」
「はいはい」
如何にも重い腰を上げた彼は髪についた花弁をばさばさと払い落とした。
先に歩き出しながら彼がついてくるのを耳で確認する。
「ザクス」
「はい?」
「多分、アレは悲しんではいないだろう…また会えると、分かっているからな」
「?」
「さっきの返事だ」
「――ええ、そうですね」
大した答えは出せなかったが、それでも満足気な声がした。
背中を押す強い風は、多くの死を巻き込んでこの生活を満たしている。
明日もまた多くの花が愛でられながら散って逝くのだろう。
「レイムさん、私桜餅が食べたいデス」
「・・・そこら辺の花びらでも拾って食ってろ」
【花葬】