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- 2026/01/22(木) 05:30:15|
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*レイム×ブレイク
ただ、無性に壊したいのです
【マリーゴールド】
愛情と憎悪と劣情と。
緋色の感情を幾重にも幾重にも重ね、重ねては千切ってゆく。
千切ったソレをベッドの上に撒き散らし其処を汚して満たされる心。
日常的生活感漂うただのベッドが何処か非日常的なモノに姿を変える恍惚。
「…下らんな」
口元を歪ませる自分を、何処か他人事の様に見下した。
影が差す。
手には緋色の花束。庭の手入れをしていた使用人から譲り受けた物だ。
昨今の友人はよく出掛け、自分とは以前と比べて話す回数が減っている。
冷めた目をして毛を逆立てていた頃の方が余程傍にいられた様に思う。
彼が豊かな感情を取り戻した事は勿論嬉しかったが、其れによって行動的になった事を思うと素直に喜ぶ事が出来なくなった。
「ザクス」
部屋の戸をノックするが返事は無い。
またしても無人かと思い、溜息をつきながら何気なく手を乗せたノブが動く。
今日は居るのだろうかと暗闇に足を進めると、灰色の視界にベッドが映った。
だが其処に彼は居ない。
「……」
彼はその脇の椅子の上で眠っていた。
その前の机には残り僅かな蝋が微かな灯りを燈して揺れている。
「ザクス」
もう一度その男の名を呼ぶが、疲れているのか身じろぎすらしない。
肘掛けから床へと垂れた白い手に指先で触れた。
掌から手首へとなぞれば、細いそこが以前にも増して痩せた様な気がして眉を顰めた。
片手に持っていた花束の包みを静かに取り払う。
その拍子に数枚の花弁が落ちたが気に留めない。
どうせ散らしてしまうのだ。
暫く使っていなさそうな、皺の無いシーツの上でその花を握り込む。
薄暗い部屋を幽かに照らす灯りが落ちて行く花に綺麗なコントラストを作った。
そうして背後で眠る男に向き直る。
眠りは深い様だが、制服のポケットから白い布を取り出し広げた。
それを眠る彼の瞳に被せ後頭部で縛る。すると彼の手がぴくりと動いた。
「誰です?」
意識半分と言った所か。此方に敵意が無いのを分かっているのか緊張は無い。
返事に迷った時、彼の方が先に「ああ、」と口端を緩めて呟いた。
「何のプレイです」
「特に考えてはいないが」
「外す訳には?」
「残念だが、これは罰ゲームだからな」
首を傾げる彼の頬を捉えて唇を重ねた。
彼は大人しくそれを受け、唇が離れるとくすくすと小さく笑った。
「何を怒っているんデス?」
「そうだな…お前が毎日の様にふらふらしているからだな」
「それで嫉妬ですか。子どもですねぇ」
「事実だろう」
目隠しをした彼の表情は窺い辛い。
だがその下の片方しかない目は確実に細められている事だろう。
座ったままでいた彼の手を引いてベッドへと誘(いざな)った。
彼は床に履いていたものを脱ぎ捨て、素足でベッドへ倒れ込んだ。
ばら撒かれていた花が反動でふわりと舞った。
「…取らないんだな」
「あぁ、コレですか?」
彼が自身に巻かれた目隠しを軽く引っ張った。
「自分で外せるだろう」
「外しませんよ。貴方が外してくれるまで」
此方が先手を取った筈なのに、いつの間にか形勢が逆転しいたようだ。
だが形勢は変われど立場は変わらないとその白い首筋に噛みついた。
「ッ、今日は随分と・・性急で」
「お前が悪い」
緩慢な動きでその薄い身体に触れ、指を絡めて幾重にもシーツに皺を刻んだ。
形を明瞭に浮かばせた鎖骨に舌をなぞらせ時折強く吸いついた。
彼といる、その中でもこの瞬間だけが男故の征服欲を満たしてくれる。
焦らす様な愛撫に彼が身体を震わせ、背を撓らせる姿を綺麗だと思った。
「・・あ、ぅ…ッン!」
細い足の間を割って彼自身を口の中に収めて舌で刺激し吸い上げる。
粘着質な白濁とした液体が零れ出し唇の端から流れ落ちた。
ゆっくりと確実に快楽を与え続け、彼の太腿が痙攣し出した頃にそれを止める。
顔を上げると目を隠しているせいか妙に濡れた彼の唇が艶めかしく映った。
普段の自分らしからぬ高揚に身体の熱が上がる気がした。
「コレ、は…なんです」
彼が手に触れたらしい花びらを指して言った。
「花だ」
「…何の、」
「さぁ、訊けばよかったな」
そうですかと追及を止めた彼に、拾い上げたその花びらを咥えさせた。
「ッ」
「罰ゲームだから、終わるまでにソレを落としたら『友人』をやめる」
そう告げて彼の両足の間に身体を割り込ませる。彼からは動揺が伺えた。
先程の液体で濡れた彼の後孔に、ゆっくりと自身を突き立てた。
「――ッ」
瞬間、中にある自身が強く締め付けられ彼の身体が強張ったのを感じた。
余程花を落としたくないのだろう。
落とすまいと花びらが千切れそうな程に噛み締めている事が窺えた。
シーツを握り込んだ指が蒼白になって行くのも目の当たりにする。
少々意地が悪過ぎたかとも思うが、やはり今日は彼に妥協をしてもらおう。
限界が近づいた時、彼は此方の背に両手で縋りついてきた。
汗で濡れて額と首筋に髪が張り付いている。
本来白い髪が、今は?の明かりで少しばかりオレンジに染められていた。
「…ン、ぅ……ッ!!」
全身が痙攣し、自分の背に爪を立てて彼はイった。
此方も彼のナカに吐き出し身体を震わす。二人の息遣いだけが部屋に残った。
僅かな余韻で不規則に体を震わす彼の目元から、生理的な涙が流れていた。
夜が明ける少し前に眠る彼の目隠しを外した。
(本当に、此方が外すまで取らなかった)
涙のせいか、その目は少し腫れて見える。少々無理を強いたかも知れない。
謝罪の気持ちで目元を拭うと、ふと唇に目が留まった。
そこは中心に近い部分が紅でも塗ったように薄く朱に染まって見えた。
彼は最後まで噛み締めた花びらを離さなかった。
その時に色が付いたのだろう。
「すまなかった」
本当は知っていた花の名前と、その意味を彼に残さぬようにと想いを込めその唇にキスをした。
【マリーゴールド】
それがとても大切だから
*マリーゴールド=悲しみ
*レイム×ブレイク
*山も無くオチも無く
オジサンは一枚上手
【rest】
国の法に則り、当然私にも休日という物が有る。
働いている私の姿しか想像がつかないだろうがそれでは過労死が必至だ。
だからと言う訳でもないが今は料理なんぞをしようとしている。
「何を作るんデス?」
「シェパーズ・パイだ」
「ほう、イギリス料理ですか」
背後から鬱陶しく首を突き出してくる彼の頭をぐいぐいと押し返した。
料理中は気が散る上に熱くて手が進まない。要するに邪魔なのだ。
羊のひき肉を作り煮込もうと動かす肘が背後の彼に引っかかる。
「良いから下がってろ」
言ったものの、ワザとらしいが肩を竦ませて引き下がるその後ろ姿に溜息をつく。
「…そこの茹でたポテトを潰してくれ」
「―了解です」
「おい待て、皮を剥いてからだ」
「あー、」
皮つきのまま潰す奴があるか。
料理が似合わないとは思っていたがまさかこれ程とは。
何にしても良い年をした男がじれったい動きで皮を剥く姿は可愛くない。
可愛くはないが、危うく口元が緩みそうになり慌てて引き締めた。
何て事だ。自分の動揺に頭が痛い。
「料理は芸術だとか芸術は爆発だなんて言葉があるが基本は押さえてくれ」
「ほう、成程そんな言葉、ガッ…!」
忠告に進んで反抗しようという空気を読み取った私はその鳩尾に一発喰らわせた。
(大して力の無い私の攻撃を何故運動神経のいい彼が避けられないのか不思議だ)
そうして決して順調とは言えない鈍行列車のようなテンポで料理は進行する。
奇跡的に良い具合に焼けたパイをテーブルに並べ、虚しくも男二人でそれを囲む。
「何でしょうねこの新婚的な仕様は」
「…頼むからツッコむな」
不満がある訳ではないが私の面目を保つために言わなければならない。
それに男同士とて友人なら食事をする事だってあるはずだ。
「別に、自然な事でしょうに」
「お前が改めて言うからだろう」
「事実にします?」
「勘弁してくれ」
落ち込んだ顔をするとはどういう事だ。
「男女のような関係はいらない。そもそも子供なんて出来ないし、私はお前の」
「私の?」
サクッと軽い音。彼がナイフでパイを割っていた。
「――友人だ」
「…おやまぁ」
「不満か」
「いいえ?十分ですよ」
そんな穏やかな顔を浮かべられると流石に達観したような、年上だと感じてしまう。
「今、年寄り臭いって言いませんでしたカ?」
「空耳だ。というか何も言って無い」
私もナイフとフォークを手に取りパイを割った。芳ばしい良い香りだ。
しかし肉をフォークに刺し口に運びかけた所でストップ。
彼がにんまりとして同じものを差し出している。無言で見つめて結局無視した。
「素直じゃないですネ」
「空耳か?」
「いいですよもう」
手は引っ込められ、それは口に放り込まれた。
黙々と食べる様は傍から見れば誤解を招くだろうが内心は至って穏やかである。
無意味な会話こそ有意義で面白い。
「ご馳走様でした」
空になった皿を見て、正直食える物が作れて良かったなどと思ってしまった。
取り敢えず『食材』に謝罪する。
安価なワインを開け、また無意味な会話を繰り返し、ふとグラスを傾けるその手を取った。
「何です」
「ここ切れてないか?」
小さいが薬指の側面に薄っすらと赤く細い線が見える。
「皮の時か?」
「皮の時ですね」
今の今まで気付かなかったのだから、痛みは無い様だ。
その指に口を寄せるとクスクスと笑いながら止められた。
「血は出ていませんヨ」
「知ってる」
「まだ昼間ですよ」
「それも知ってる」
「いつならいい?」
「此れを片付けて部屋を掃除して夕食をとってシャワーを浴びて歯を磨いて――」
「分かったもういい」
何でも無い日常でも羅列されると疲れる。手を離して大人しく食器を運んだ。
「全く貴方は分かりやすい」
「お前と違ってな」
日が傾くのもいいが、もう少しこの時間を楽しむのも悪くないかも知れない。
【rest】
さて、次の休日は何をしようか
*レイム×ブレイク
一緒に居る理由なんて分からなくていい
【Distance of dear】
どうしてあの二人は一緒につるんでいるのだという小言を聞いた事がある。
さほど昔の事ではないが、最近の事でもない。そんな時期に聞いた気がする。
と、言われた。
「疑問に思う人間は正常だな!」
「…どういう意味ですカ!」
「そんな事より早く寝グセを直せ!」
脹れっ面と真顔が並んでいる様を見れば一方が遊ばれている事が直ぐ分かる。
生憎ここは室内であって誰も見る人間など居ないのだが傍から見ればそれなりに微笑ましく、それなりにアンバランスに見えただろう。
二人して鏡の前であくせくと歯を磨いていたりなんてしたら、確実だ。
「酷いですヨ、貴方がしっかり起きるのを期待してたのに」
「あれだけ疲れた上にお前が何度も私を蹴飛ばし睡眠を妨害するからだ」
「私はお上品に寝ていますって」
「嘘つけ!寝相悪過ぎだぞあれは」
昨晩余り他人には言えない事をあれやこれやとやった末就寝が遅くなった。
翌日仕事があるにも関わらず長引いた事は互いの責任だが一方的に安眠妨害をされた身としては流石に受け入れ難い物がある。
「貴様に蹴られた腹がだな…そこじゃないもっと上だ」
「あぁ、此れデスネ」
動き回った証拠だ。頭頂部のやや後ろに盛大に跳ねあがった髪の束がある。
やはり確かにこんなに手間の掛る奴と一緒に居れば周囲の疑問も頷けた。
「そう思われるのも私の人徳だろうか」
「…何か言いました?」
「何も。…直らないならいっそ風呂に入ってきたらどうだ」
いい加減口の中を濯ぎブラシを置く。
未だ寝ぐせと格闘する彼が目に余り風呂の方へとぐいぐい背を押した。
「それこそ遅れてしまいマス」
「仕方ない、私が先に行って誤魔化しておくから早く行って来い」
「ハイハイ。有難うございマース」
手間のかかる男を風呂場へ放りこむとクローゼットへ向かった。
行儀よく並び皺一つ無い制服を取り出しさっさと袖を通す。
テキパキと何かの見本の様な動きで身支度を整えると漸く職場へと向かった。
ある程度の予想はしていたが彼が遅れる事を気にする者は少なかった。
日ごろの行いか、遅れると言うより何処かでふらついているだろうと言うのが大方の意見の様だ。
わざわざ遅刻の言い訳をする必要も無いので放っておいた。
「レイムさん」
「日ごろの行いが悪い事が幸いしたな」
「…頭でも打ちましたカ?」
「まぁ今日に限っての事だが」
「ハイ?」
声を掛けた途端に意味の解らない事を言われて立ち尽くす彼はさておき今日も元気に盛大に山積みにされた報告書やら何やらを片付けなければならない。
「ほれ、さっさと行くぞ」
「いだだだだ」
突っ立ったっているその耳を摘みぐいぐいと引っ張った。
多少痛かろうがコレは至って優しい報復という事にして頂きたい。
此方もどこか頭が痛いのだ。
「…レイムさん」
「…何だ」
「貴方ちょっと顔赤くありません?」
「そんなの、自分じゃ知らん」
「赤いですよ」
「私は別になんともない」
「あーもー」
「――痛ッ!」
ズビシと頭に手刀が見舞われた。
強い衝撃ではないがそれなりの痛みに呻く。ついでに眼鏡もずれた。
「涙目の貴方も悪くないですが、ほら、戻りますヨ」
「い、今から帰っ――うぉおお!」
これぞ攻守逆転というのか、今度は自分が引きずられる羽目になっていた。
この男の見かけからは想像の付かない腕力に観念しつつ今朝慌てて出て来た部屋に戻った。
何とも言い難い虚しさはこの際仕方が無い。
「ホラ、さっさと制服を脱いで横になる」
「そんな大袈裟な…」
「早く仕事に戻りたくばさっさと寝なサイ」
「……」
確かに早く戻りたい。身体もやはり不調な様だし寝た方が良いに決まっている。
一瞬の逡巡の末どうせ逃げられもしないのだから休むことにした。
「まぁ、お前の仕事を代わりにやり過ぎたと言えばいいしな」
「ちょっと、酷いですよ。ワタシが悪いみたいじゃないですか」
「悪いだろう」
眼鏡を外し制服を脱いでベッドへ横になると、途端に眠気が襲ってきた。
「何か要るものは?」
「何も…あぁ、水だけ頼む」
もし熱が上がれば喉が渇くだろうと思ったのだ。
特に気遣う風でもなく彼は淡々としてグラスに水を入れて来た。
特別気遣われない分こちらも変に気疲れすることもないので楽である。
何も言いやしないのにそれを直ぐ近くの机に置きベッドの脇に座った。
しかしやはり熱が上がる前に飲んだ方が良いかと思い結局薬を取り出して飲んだ。
「他には?あ、添い寝でもしますカ?」
「勘弁してくれ…今朝のでもう十分だ」
何時に無く楽しげなのは解って言っている証拠だ。質の悪い。
「…そう言えば、ピアスは外さないんですカ?」
「?――あぁ、大丈夫だ。別に危なくない」
「ほー」
「何だ、付けたくなったか?」
少し意外な反応にそう言ったが、彼はにやりと笑った。
「いえ、結構ですよ。貴方が付けてますから」
「何だそれは」
小さく苦笑して、目を閉じた。そろそろ瞼が重くなって来ていた。
「ところで、お前は何時になったら仕事へ戻るんだ?」
「…バレましたカ」
「さっさと行って来い馬鹿」
「レイムさんってばイケズ」
「いいからさっさと行け」
「ハイハイ。解りましたヨー」
猫背に去っていく後ろ姿を見送ると小さな笑いが吹き出した。
口数はまぁ人並。
それ程盛り上がる会話もしない。
喧嘩の数はそれなり。
互いの過去は互いにさほど知らない。
それでも信頼が置けるし安心がある。
彼とつるむ理由はそんな所だなと思いつつ、普段より幾分良い気分で眠りについた。
【Distance of dear】
気にしていないから一緒に居られる
*レイム×ブレイク
*
はらり はらり
【灰桜】
長いけれど短い。
掬いあげてはさらさらと落ちてゆく白い髪に図らずも手が震えた。
「だからこのままでいいと」
「そうはいかん。オズ様の社交界デビューという正式かつ重要な場で、」
「あーハイハイすみません続けて下さい」
縛ってやるから座れと言われて座ったのは何分前だったか。
見えもしない鏡の前に座りただレイムに髪を引っ張られるのを感じていた。
「前のように長ければ楽だったんだがな」
「何年前の話をしてんですか」
「あの時は鬱陶しいくらい長かったのに…いや、止めよう」
「ハハ、そうして下さい」
見えない物を察してくれるのは有り難かった。
長年の付き合いがあるとして、ここまで気心の知れる相手にはそう恵まれまい。
御蔭でこの長い時間も退屈では無い。
結うというより詰めるという表現が正しい作業に没頭する彼は相変わらず前進が無くまとめては落ちる髪に彼の眉間はきっと皺だらけだろう。
「ホント大人になりましたねぇ」
「…何だ急に」
「そりゃ目も見えなくなる訳デス」
「……お前な」
「年寄りの老眼みたいに思えばいいんですヨ。自然な事でしょう?」
「…。ま、じーさんなのは確かだな」
「あ、イタタタ」
止まっていた手が動き出す。
先程よりややぶっきら棒な手つきなのは少し悪乗りが過ぎたからだろうか。
髪を引かれた頭が前後にぐわんぐわん揺れた。
「留める紐の色は希望あるか?」
「そう言うのはあまり関心が無いので…任せますヨ」
「浮ついたお前にぴったりのピンクなんてどうだ」
「憐れな年寄りにお慈悲をお願いします」
いくら見えないからってそんな色は勘弁願いたい。
許しを請う様に身を屈めると、彼の手から髪が落ち結局お叱りを受ける事になった。
「ザクス、お前衣装用のクローゼットとか有るか?」
「部屋を入って左手デス」
「これか?」
「そうソレですそれ」
足音でどちらに動いているのかを察しながら会話は自然と繋がっていく。
ベッドに座りレイムが物色しているのをただ待った。待っているだけだが何か楽しい。
少し離れた所で彼が何やらぶつぶつ言っているのが聞こえた。
「これでいいか…」
「ちょっと、いい加減じゃないでしょうね」
「そんな訳あるか」
立ち上がると洋服が前に押しつけられる。うーんと唸る声が目の前に零れた。
「…何かご不満でも」
「もう少し丈の長いほうがサマになる気が」
そんなに気にしなくてもという言葉を言うより早く彼はクローゼットへと向かっている。
「こっちを着てみてくれ。小物はまた私が用意しておく」
「君って案外凝り性ですよネ」
着ていた上着を脱いで袖を通すと、先程までの私服よりずっしりとした重みを感じた。
見えないので何とも言えないが流石に正装は身が締まる。
「あ、こら動くな」
つい移動しようとした袖を引かれて向き直らされる。
襟元を正されリボンタイらしきものを通された。しゅるしゅると音が耳元に鳴っている。
会話が盛り上がるでもなく静かな部屋で淡々と進められていった。
「―やっぱりタイじゃなくてスカーフだな」
「…もうそれは、後にしませんか」
するすると抜けて行く襟のリボン。その音を聴いていると少々遊び心が湧いた。
それを引く彼の手を取って口を寄せる。意図は簡単に伝わった。
「いいのか?直前に焦る事になるかも知れんぞ」
「大丈夫ですヨ。何たってパーティーは“明日の午後”ですから」
見えないが、視線を交わすと開いた首筋にキスが落とされた。
明日着る服が汚れては不味いので早々に脱がされ放られた。
壁に追い込まれ不本意な事に180cm以上もの長身に見下ろされる形だ。
何時もの様にベッドに寝ていれば意識しない事にも改めて気が付いてしまう。
舌を絡め合うキスは名残り惜しげに互いの唇を唾液の糸で繋いで離れた。
「―いッ、ちょ…出来れば布団の上が良いのですが」
「誘ったのはお前だろ。何時もと違ってもいいんじゃないか?」
「いや、明日立てなくなりますって…!」
両足の間に彼自身の足が割り込む。背が壁に押しつけられて少々痛んだ。
シャツの緩んだ胸元から冷たい手が滑りこんでくる。
肌をきつく吸われ、その小さな痛みがキスマークを付けられた事を告げた。
首筋・胸・口内と愛撫をされながらスラックスの前が寛げられ身体が震える。
「…ぅ、あ…ちょっと、まッ――」
自身をゆるく握られ太腿に快楽の波が押し寄せた。
しばらく直に手で抜かれた後、その指先が更に下の後膣へと滑り込んだ。
ぬるっと体内に侵入した異物の感覚が身体を支える足の力を奪って行く。
「…ふ、くッ…ア」
「――おい、」
ぐらついた身体をすかさずレイムの腕が支えた。
気付けば腰に添えられた腕に殆んどの体重をかけてしまっていた。
「大丈夫か?」
「よくも白々しく…だからベッドでと」
「そう睨むな。お前なら大丈夫だろう」
「そんな事で買いかぶられて、も」
強い刺激に思わず唇を噛む。卑猥な水音が徐々に聞こえ始め身体が火照った。
先の会話も虚しく遠慮の無い指の挿入が変わらず続く。
緩んだ口元から零れた唾液を拭う事さえ出来なかったが直ぐに彼が拭ってくれた。
「そう、言え…ば、見えない君とするのはッ―初めてです、ね…」
「…あぁ、そうだな」
苦く笑った口にキスをされた。それ以上は言って欲しく無いらしい。
暫くすると指が抜かれより質量の大きい彼自身がソコに宛がわれた。
するとここに来て初めての違和感を自覚した。
(――恐怖)
目の前に居るのは確かに「彼」であるのに見えない暗い影が不安を呼ぶ。
らしくもなく、縋る様に彼の腕を握りしめた。
「…ザクス?」
「足に力が、入らないだけデス…大丈夫ですよ」
此方を気遣う様子が伝わってくる。
しかしゆっくりと彼が内側へと入って来ると、それも考えられなくなった。
「ひ、あ…ぁ……アァッ」
突き上げられ、自分の体重で更に奥へと打ちつけられる衝撃に視界はブレた。
今まで感じた事も無い快楽に理性が飛びそうになる。
だが先程の自分の発言に残っていた理性が覚醒した。
縋っていた両手を目の前に居る彼の頬へと伸ばして触れる。温かかった。
「ねぇ…貴方は、いまどんな顔を、してます…?」
「どんな、って」
「ほら、自分が今どんな顔をしているのか言ってごらんなさい」
「…な、どうして」
「今の…君が知りた、いのです…記憶の、残像ではなくてね」
言って哀しくなったが言葉にしなければ仕方の無い事だ。
真意が伝わったのか、暫く黙っていた彼は言い辛そうに重い口を開いた。
「今は、その…多分眉を寄せて、顔が赤くて…困った、顔を…」
限界か。
きっと「今」は穴があったら入りたいという顔をしているに違いない。
「ハイハイご馳走さまデシター」
「おま…ッ」
「…ありがとうございます」
「――あぁ」
辛くて寂しいが、温かい。散っていく桜を見る様な気分だ。
抱き寄せられた身体に、より彼を感じ再び快楽の波へと飲まれていった。
「…いたいです」
「……。すまん」
「まぁいいですケド。可愛いー君も見れた事ですし」
「な!」
「あぁほら眼鏡落ちましたヨ」
かくして早朝の痛みは暫く引きずる事になる。
しかし再び髪を結う彼が会場へ出る直前まで苦労していたので良しとした。
【灰桜】