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- 2026/01/22(木) 07:10:55|
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*レイム×ブレイク
*
はらり はらり
【灰桜】
長いけれど短い。
掬いあげてはさらさらと落ちてゆく白い髪に図らずも手が震えた。
「だからこのままでいいと」
「そうはいかん。オズ様の社交界デビューという正式かつ重要な場で、」
「あーハイハイすみません続けて下さい」
縛ってやるから座れと言われて座ったのは何分前だったか。
見えもしない鏡の前に座りただレイムに髪を引っ張られるのを感じていた。
「前のように長ければ楽だったんだがな」
「何年前の話をしてんですか」
「あの時は鬱陶しいくらい長かったのに…いや、止めよう」
「ハハ、そうして下さい」
見えない物を察してくれるのは有り難かった。
長年の付き合いがあるとして、ここまで気心の知れる相手にはそう恵まれまい。
御蔭でこの長い時間も退屈では無い。
結うというより詰めるという表現が正しい作業に没頭する彼は相変わらず前進が無くまとめては落ちる髪に彼の眉間はきっと皺だらけだろう。
「ホント大人になりましたねぇ」
「…何だ急に」
「そりゃ目も見えなくなる訳デス」
「……お前な」
「年寄りの老眼みたいに思えばいいんですヨ。自然な事でしょう?」
「…。ま、じーさんなのは確かだな」
「あ、イタタタ」
止まっていた手が動き出す。
先程よりややぶっきら棒な手つきなのは少し悪乗りが過ぎたからだろうか。
髪を引かれた頭が前後にぐわんぐわん揺れた。
「留める紐の色は希望あるか?」
「そう言うのはあまり関心が無いので…任せますヨ」
「浮ついたお前にぴったりのピンクなんてどうだ」
「憐れな年寄りにお慈悲をお願いします」
いくら見えないからってそんな色は勘弁願いたい。
許しを請う様に身を屈めると、彼の手から髪が落ち結局お叱りを受ける事になった。
「ザクス、お前衣装用のクローゼットとか有るか?」
「部屋を入って左手デス」
「これか?」
「そうソレですそれ」
足音でどちらに動いているのかを察しながら会話は自然と繋がっていく。
ベッドに座りレイムが物色しているのをただ待った。待っているだけだが何か楽しい。
少し離れた所で彼が何やらぶつぶつ言っているのが聞こえた。
「これでいいか…」
「ちょっと、いい加減じゃないでしょうね」
「そんな訳あるか」
立ち上がると洋服が前に押しつけられる。うーんと唸る声が目の前に零れた。
「…何かご不満でも」
「もう少し丈の長いほうがサマになる気が」
そんなに気にしなくてもという言葉を言うより早く彼はクローゼットへと向かっている。
「こっちを着てみてくれ。小物はまた私が用意しておく」
「君って案外凝り性ですよネ」
着ていた上着を脱いで袖を通すと、先程までの私服よりずっしりとした重みを感じた。
見えないので何とも言えないが流石に正装は身が締まる。
「あ、こら動くな」
つい移動しようとした袖を引かれて向き直らされる。
襟元を正されリボンタイらしきものを通された。しゅるしゅると音が耳元に鳴っている。
会話が盛り上がるでもなく静かな部屋で淡々と進められていった。
「―やっぱりタイじゃなくてスカーフだな」
「…もうそれは、後にしませんか」
するすると抜けて行く襟のリボン。その音を聴いていると少々遊び心が湧いた。
それを引く彼の手を取って口を寄せる。意図は簡単に伝わった。
「いいのか?直前に焦る事になるかも知れんぞ」
「大丈夫ですヨ。何たってパーティーは“明日の午後”ですから」
見えないが、視線を交わすと開いた首筋にキスが落とされた。
明日着る服が汚れては不味いので早々に脱がされ放られた。
壁に追い込まれ不本意な事に180cm以上もの長身に見下ろされる形だ。
何時もの様にベッドに寝ていれば意識しない事にも改めて気が付いてしまう。
舌を絡め合うキスは名残り惜しげに互いの唇を唾液の糸で繋いで離れた。
「―いッ、ちょ…出来れば布団の上が良いのですが」
「誘ったのはお前だろ。何時もと違ってもいいんじゃないか?」
「いや、明日立てなくなりますって…!」
両足の間に彼自身の足が割り込む。背が壁に押しつけられて少々痛んだ。
シャツの緩んだ胸元から冷たい手が滑りこんでくる。
肌をきつく吸われ、その小さな痛みがキスマークを付けられた事を告げた。
首筋・胸・口内と愛撫をされながらスラックスの前が寛げられ身体が震える。
「…ぅ、あ…ちょっと、まッ――」
自身をゆるく握られ太腿に快楽の波が押し寄せた。
しばらく直に手で抜かれた後、その指先が更に下の後膣へと滑り込んだ。
ぬるっと体内に侵入した異物の感覚が身体を支える足の力を奪って行く。
「…ふ、くッ…ア」
「――おい、」
ぐらついた身体をすかさずレイムの腕が支えた。
気付けば腰に添えられた腕に殆んどの体重をかけてしまっていた。
「大丈夫か?」
「よくも白々しく…だからベッドでと」
「そう睨むな。お前なら大丈夫だろう」
「そんな事で買いかぶられて、も」
強い刺激に思わず唇を噛む。卑猥な水音が徐々に聞こえ始め身体が火照った。
先の会話も虚しく遠慮の無い指の挿入が変わらず続く。
緩んだ口元から零れた唾液を拭う事さえ出来なかったが直ぐに彼が拭ってくれた。
「そう、言え…ば、見えない君とするのはッ―初めてです、ね…」
「…あぁ、そうだな」
苦く笑った口にキスをされた。それ以上は言って欲しく無いらしい。
暫くすると指が抜かれより質量の大きい彼自身がソコに宛がわれた。
するとここに来て初めての違和感を自覚した。
(――恐怖)
目の前に居るのは確かに「彼」であるのに見えない暗い影が不安を呼ぶ。
らしくもなく、縋る様に彼の腕を握りしめた。
「…ザクス?」
「足に力が、入らないだけデス…大丈夫ですよ」
此方を気遣う様子が伝わってくる。
しかしゆっくりと彼が内側へと入って来ると、それも考えられなくなった。
「ひ、あ…ぁ……アァッ」
突き上げられ、自分の体重で更に奥へと打ちつけられる衝撃に視界はブレた。
今まで感じた事も無い快楽に理性が飛びそうになる。
だが先程の自分の発言に残っていた理性が覚醒した。
縋っていた両手を目の前に居る彼の頬へと伸ばして触れる。温かかった。
「ねぇ…貴方は、いまどんな顔を、してます…?」
「どんな、って」
「ほら、自分が今どんな顔をしているのか言ってごらんなさい」
「…な、どうして」
「今の…君が知りた、いのです…記憶の、残像ではなくてね」
言って哀しくなったが言葉にしなければ仕方の無い事だ。
真意が伝わったのか、暫く黙っていた彼は言い辛そうに重い口を開いた。
「今は、その…多分眉を寄せて、顔が赤くて…困った、顔を…」
限界か。
きっと「今」は穴があったら入りたいという顔をしているに違いない。
「ハイハイご馳走さまデシター」
「おま…ッ」
「…ありがとうございます」
「――あぁ」
辛くて寂しいが、温かい。散っていく桜を見る様な気分だ。
抱き寄せられた身体に、より彼を感じ再び快楽の波へと飲まれていった。
「…いたいです」
「……。すまん」
「まぁいいですケド。可愛いー君も見れた事ですし」
「な!」
「あぁほら眼鏡落ちましたヨ」
かくして早朝の痛みは暫く引きずる事になる。
しかし再び髪を結う彼が会場へ出る直前まで苦労していたので良しとした。
【灰桜】