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- 2026/01/22(木) 07:12:26|
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*レイム×ブレイク
一緒に居る理由なんて分からなくていい
【Distance of dear】
どうしてあの二人は一緒につるんでいるのだという小言を聞いた事がある。
さほど昔の事ではないが、最近の事でもない。そんな時期に聞いた気がする。
と、言われた。
「疑問に思う人間は正常だな!」
「…どういう意味ですカ!」
「そんな事より早く寝グセを直せ!」
脹れっ面と真顔が並んでいる様を見れば一方が遊ばれている事が直ぐ分かる。
生憎ここは室内であって誰も見る人間など居ないのだが傍から見ればそれなりに微笑ましく、それなりにアンバランスに見えただろう。
二人して鏡の前であくせくと歯を磨いていたりなんてしたら、確実だ。
「酷いですヨ、貴方がしっかり起きるのを期待してたのに」
「あれだけ疲れた上にお前が何度も私を蹴飛ばし睡眠を妨害するからだ」
「私はお上品に寝ていますって」
「嘘つけ!寝相悪過ぎだぞあれは」
昨晩余り他人には言えない事をあれやこれやとやった末就寝が遅くなった。
翌日仕事があるにも関わらず長引いた事は互いの責任だが一方的に安眠妨害をされた身としては流石に受け入れ難い物がある。
「貴様に蹴られた腹がだな…そこじゃないもっと上だ」
「あぁ、此れデスネ」
動き回った証拠だ。頭頂部のやや後ろに盛大に跳ねあがった髪の束がある。
やはり確かにこんなに手間の掛る奴と一緒に居れば周囲の疑問も頷けた。
「そう思われるのも私の人徳だろうか」
「…何か言いました?」
「何も。…直らないならいっそ風呂に入ってきたらどうだ」
いい加減口の中を濯ぎブラシを置く。
未だ寝ぐせと格闘する彼が目に余り風呂の方へとぐいぐい背を押した。
「それこそ遅れてしまいマス」
「仕方ない、私が先に行って誤魔化しておくから早く行って来い」
「ハイハイ。有難うございマース」
手間のかかる男を風呂場へ放りこむとクローゼットへ向かった。
行儀よく並び皺一つ無い制服を取り出しさっさと袖を通す。
テキパキと何かの見本の様な動きで身支度を整えると漸く職場へと向かった。
ある程度の予想はしていたが彼が遅れる事を気にする者は少なかった。
日ごろの行いか、遅れると言うより何処かでふらついているだろうと言うのが大方の意見の様だ。
わざわざ遅刻の言い訳をする必要も無いので放っておいた。
「レイムさん」
「日ごろの行いが悪い事が幸いしたな」
「…頭でも打ちましたカ?」
「まぁ今日に限っての事だが」
「ハイ?」
声を掛けた途端に意味の解らない事を言われて立ち尽くす彼はさておき今日も元気に盛大に山積みにされた報告書やら何やらを片付けなければならない。
「ほれ、さっさと行くぞ」
「いだだだだ」
突っ立ったっているその耳を摘みぐいぐいと引っ張った。
多少痛かろうがコレは至って優しい報復という事にして頂きたい。
此方もどこか頭が痛いのだ。
「…レイムさん」
「…何だ」
「貴方ちょっと顔赤くありません?」
「そんなの、自分じゃ知らん」
「赤いですよ」
「私は別になんともない」
「あーもー」
「――痛ッ!」
ズビシと頭に手刀が見舞われた。
強い衝撃ではないがそれなりの痛みに呻く。ついでに眼鏡もずれた。
「涙目の貴方も悪くないですが、ほら、戻りますヨ」
「い、今から帰っ――うぉおお!」
これぞ攻守逆転というのか、今度は自分が引きずられる羽目になっていた。
この男の見かけからは想像の付かない腕力に観念しつつ今朝慌てて出て来た部屋に戻った。
何とも言い難い虚しさはこの際仕方が無い。
「ホラ、さっさと制服を脱いで横になる」
「そんな大袈裟な…」
「早く仕事に戻りたくばさっさと寝なサイ」
「……」
確かに早く戻りたい。身体もやはり不調な様だし寝た方が良いに決まっている。
一瞬の逡巡の末どうせ逃げられもしないのだから休むことにした。
「まぁ、お前の仕事を代わりにやり過ぎたと言えばいいしな」
「ちょっと、酷いですよ。ワタシが悪いみたいじゃないですか」
「悪いだろう」
眼鏡を外し制服を脱いでベッドへ横になると、途端に眠気が襲ってきた。
「何か要るものは?」
「何も…あぁ、水だけ頼む」
もし熱が上がれば喉が渇くだろうと思ったのだ。
特に気遣う風でもなく彼は淡々としてグラスに水を入れて来た。
特別気遣われない分こちらも変に気疲れすることもないので楽である。
何も言いやしないのにそれを直ぐ近くの机に置きベッドの脇に座った。
しかしやはり熱が上がる前に飲んだ方が良いかと思い結局薬を取り出して飲んだ。
「他には?あ、添い寝でもしますカ?」
「勘弁してくれ…今朝のでもう十分だ」
何時に無く楽しげなのは解って言っている証拠だ。質の悪い。
「…そう言えば、ピアスは外さないんですカ?」
「?――あぁ、大丈夫だ。別に危なくない」
「ほー」
「何だ、付けたくなったか?」
少し意外な反応にそう言ったが、彼はにやりと笑った。
「いえ、結構ですよ。貴方が付けてますから」
「何だそれは」
小さく苦笑して、目を閉じた。そろそろ瞼が重くなって来ていた。
「ところで、お前は何時になったら仕事へ戻るんだ?」
「…バレましたカ」
「さっさと行って来い馬鹿」
「レイムさんってばイケズ」
「いいからさっさと行け」
「ハイハイ。解りましたヨー」
猫背に去っていく後ろ姿を見送ると小さな笑いが吹き出した。
口数はまぁ人並。
それ程盛り上がる会話もしない。
喧嘩の数はそれなり。
互いの過去は互いにさほど知らない。
それでも信頼が置けるし安心がある。
彼とつるむ理由はそんな所だなと思いつつ、普段より幾分良い気分で眠りについた。
【Distance of dear】
気にしていないから一緒に居られる