*ヴィンセント×ブレイク
*痛い表現が苦手な方は注意
おやすみ。そして、さようなら。
【Good Night】
「君はドMですね」
「あぁ、やっぱり帽子屋さんは世間とずれてる」
呆れと恍惚の間のような顔をして諸悪の根源は呟いた。
「Mを追求したからこそSなのですよ」
「むつかしいなぁ」
黒く優しい青年の弟は全く持って酷い性格だ。ものを傷つけることに何の痛みも感じないらしい。実兄に並々ならぬ愛情を注ぎ当人さえ苦しめる。
「僕はあんたみたいに友情を捧げる相手とか居ないから」
「だから偏ると?」
「うん。変かなぁ」
「…えぇ、申し分無い程度には変です」
「そ?ありがと」
にこりと笑った顔は随分幼かった。
それは自分がベッドに仰向けになった状態でなく、ましてや青年が錆びた鋏等持っていなければもっと微笑ましく映ったかもしれない。手首を戒める縄を横目で見てため息をついた。
「腕、疲れる?」
「ずっと上に上げられてればそれはね」
「ついでに目も隠しちゃおうか」
「…既に余り見えていないので大差ありませんよ」
(あ、)
「へぇ?」
(しまった)
「そうなんだ…じゃあやっぱり帽子屋さんてもう長くないんだね」
殊更愉快気になった彼は私の頬に触れてきた。頬を滑り、指先が唇を愛撫するように触れた指先が目蓋に触れる。不愉快極まりない。
「触らないで頂けます?」
「なぜ」
「不愉快だからですよ、薄汚い鼠が」
「あはは、帽子屋さんだって一緒じゃない」
腹を抱えて笑う様は滲み出る狂気を感じさせた。くつくつと込み上げる笑いを噛み殺した彼はふーっと息をついてベッドを軋ませた。二人分の体重で身体が少しばかり沈む。
「可哀そうな人」
「それはどうも」
目蓋に唇が落ちる。
抵抗する気はなかった。体力の無駄だし、今更これくらいの事は何とも思わない。この男は遊び飽きれば捨てるのだからそれを待てばいいのだ。
「貴方も存外にね」
覆い被さった男がリボンタイを咥えて解いていく。
執拗に嫌うという事は執拗に追い求めている事と同義ではないだろうか。事実この男は今自分を犯さんとしている。遊びの一環といえばそれまでだろうが違うような気もしている。
「考え事?」
「えぇ、退屈なので」
「それ、直ぐに切ってあげるから待っててね」
薄暗い視界にチカと光るモノがあった。鋏だ。
タイを解かれシャツから徐々に肌が露になる。見たくも無い業の証に冷たい手が触れて思わず実を固くした。彼がその反応に口元を歪めたのは言うまでもない。
「敏感」
耳元で囁かれた言葉が肌を粟立たせた。胸の突起にぬるりと生暖かい下を這わされ思わず眉を顰める。こんな男を相手に快楽など期待できない。そもそもする気もないが。
「貴方の玩具達は非常に不憫です」
「…自分が玩具だって分かってるみたいな口ぶりだね」
じゃあ、とばかりに彼は緩慢な動作で鋏を取り出した。
「ご褒美に帽子屋さんも布切れみたいにしてあげようか」
「これだから不憫だと…ッ、ぅ」
頭上で縛り付けられた掌に鋏の先端が押し当てられる。閉じているため刃は出ていないが容赦なく押さえつけられるそれは今にも肉を食い破りそうだ。手に気をとられている間に上着は完全にはだけられていた。ギリギリと痛みを植えつけられるのを感じながら首、鎖骨と濡らしていく男を見やった。
「痛い?」
「まぁ…人並み、に」
「泣きそうなくらい痛いって言えばいいのに。意地っ張りだなぁ」
限界まで押し込まれる鋼は痛みさえ薄れさせた。そして。
「
―が、ァ!」
限界に達した皮膚が裂け、血が溢れた。
衝撃に悲鳴も上がらない。身体が仰け反り、呼吸が浅くなった。
「あぁ、思ったより酷いね」
まだ死なれては困ると言って彼は鮮血の溢れるそこに持っていたスカーフを巻き始めた。
「…お優しい、ことで」
「玩具は大切にしないといけないもの」
どの口が言うのか。思いこそすれ言葉にする気力も無く流した。処置を施した際、袖に血がついたのか洋服が汚れている。
「放っておきなさい…その染み、取れなくなりますよ」
「メインの前に最期が来ちゃ駄目でしょ。…ねぇ、この血は僕と同族みたいなものかな」
「は…?」
「乾いて何処にも流れていけない、一箇所に固まって動けないんだ」
「…辛抱強く水を受け入れれば、可能かも知れませんよ…?」
「………」
未だ出血は止まらず、掌にずくずくと痛みを感じながら自分は何を言っているのかと自問した。慰めの様な言葉などこの男にくれてやる義理もなく、むしろ貶めても不思議ではない。許されるはずだ。今の自分なら。
「―変な人だね、帽子屋さんは」
手にべったりとついた赤を、彼は私の腹に広げた。
赤い川のように下腹部へ流れた手はスラックスの中へ入り、滑る手で性器に触れた。痛みに気を取られ思わぬ刺激に身を固くしてしまう。
「…かわいい」
「気色の悪い事、言うんじゃ、な…、」
何処か性急な所作で施される愛撫に違和感を感じながらも反応せざるを得ない。俄かに濡れだしたそこを意識せぬようにしながら相手の顔を盗み見た。らしくない、余裕のない顔だった。自分の血で真っ赤に濡れたそこはまるで女性器の月経のようである。汗と精液で一向に乾燥しない為か触れられる度に範囲を広げてしまう。
「へぇ…良い格好だね、帽子屋さん」
「…はっ、ぁ…」
誰のせいだと悪態をつく余裕は残念ながらない。貧血で目の前が霞んだ。しかしそれを両断するように尻に違和感を覚え覚醒する。挿れる気か、そう思った頃には体内にねじ込まれる激痛に身悶えていた。
「―あ”、あぁ…ッ…ぅ!」
身体が動くたび手首の縄がきつく締まり痛む。
急激に力が入り細かく震えだした足はヴィンセントの腕に抱えられ宙に浮いている。
(随分…痩せましたねぇ)
朧な視界で遠くの意識がそう言った。確かにこの時代に来る前は、もう少し肉がついていたかも知れない。白いのは相変わらずだったがこれ程筋の浮いた足ではなかった。
「…も、う…離、し…!」
髪の垂れ下がった彼の表情は見えない。唇をかみ締める口元が見えるのみだ。内壁さえ抉ろうかという挿入に理性が限界を訴えた。あらゆる要因で、壊れる。
「ふ、ぁ、…あ”あぁッ!!」
「ぅ…!」
ガクガクと身体が震える。吐き出した微量の精液は腹の血に重なり、体内に吐き出されたそれは挿入口から糸を引いて流れ出た。
「さくら、みたい…」
白濁とした液に血が混ざったそれを指で掬い、目の前に見せ付けられる。
「………」
言葉にする事もままならず、それが何だと言うように視線を向ければ汚れた掌で視界を覆われてしまった。疲労もあってか眠気が酷い。だからそのまま目を閉じた。
「貧血で死なないでよ…つまらないから」
手首の縄が解かれたのか腕が軽くなった。直に彼がベッドから離れたのだろうか。僅かに浮き上がったクッションの上で血が乾き皮膚の張る感覚を覚え、それを爪で引っ掻いた。
「これは、流すのに時間が掛りそうだ…」
呟いたそれが情の一つであるかは分からない。
ただ何となく、あの袖の染みが何事も無かったかのように白くなればいいと、そう思っていた。
【Good Night】
少しでも潤えばきっと
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*汚れが落ちる=ヴィンセントの偏愛が無くなる
そんな意味合いで。
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- 2011/08/24(水) 02:49:18|
- その他CP|
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