*レイム×ブレイク
*現代パロディ
1「彷徨う人」
いつか見た彼岸の花が蘇る。
夕日に照らされた草花も何もかもが赤色に染まり、穏やかな風に揺れていた。隣に居た両親が小さな手を引き笑う声。自分はそれに耳を傾け幸せに頬を緩めていた。
しかし今は違う。
目の前にあるのは夕日でも彼岸花でもなく炎の赤だった。明け方にも関わらず妙に明るい。自分の家が燃えている。体中を汗が流れ落ち雨でもないのに滑稽なほど濡れていた。瞳孔が開くほど見開いた目の先は自分を外へ押し出した母がいた場所だ。2階の窓から投げ出された自分は救助隊に助けられたが、振り返った先に母は居なかった。中に居る父はどうなったのか。母は父と共に出てくるに決まっている、この赤はまたいつかのあの花にかわるのだと信じて待った。待ったが、彼らが自分の前に出てくることは無かった。
母が私を押した時囁いた言葉は今も消えない。
2「予期せぬこと」
「ケビン・レグナード君よ。皆仲良くしてあげて頂戴ね」
マリア像を模ったような妙齢のシスターが私を孤児達に紹介した。
両親が亡くなり孤児となったが引き取ってもらえるような身内は居なかったため、田舎のはずれにあるこの孤児院へいく事となった。私は葉が全て落ちた木のように自失状態だった。それに加え余り社交的ではない性格もあってか優しい施設の人間にはよく気を遣われ、同年の子ども等からは少し距離を置かれていた。5歳~18歳くらいの20名程の子どもが集団で生活し、掃除・炊事・洗濯なんでも手伝った。当時8歳だった自分は学校へ通うことを勧められ、丁度施設内で気を遣われることに疲れ始めていたのでそれを受けた。
小学校はキー・ステージ2に入った。ここで11歳までを過ごす事になる。
16までの義務教育を終えたら、孤児院を出るつもりだ。学校での生活は施設と大差なく友人と呼べる付き合いも無いままに過ごしていたが授業はそれなりに楽しんでいた。学ぶほどに世界は広がり、自立する術を得られる。珍しい白髪も話題にされることはあっても気を害するような事にはならなかったので内心ほっとしていた。16になる頃には130cmそこそこだった身長も170cm近くまで伸び、髪もあまり切っていなかったので肩甲骨辺りまで伸びたそれを一つに束ねていた。
「あの、これ良かったら…もらってくれませんか?」
「…どうも」
見た目がそこそこ女性に受けが良いらしく時たま差し入れと称した菓子を受け取ったりもした。
それは可憐で大人しそうな子であったり、下心の浮き出た年上の女性であったりしたが特に興味がなかったので深く関わるようなことはなかった。なにより何故無愛想な自分なのか不思議でならなかった。女性の心理は分からないまま学生生活は着々と勉強に費やし過ぎていった。
しかし卒業試験が近づいた頃、私は一人の少年と出会う。
通学途中の交差点で運悪く車両に当てられた時だ。跳ねられるとまでは行かなかったが、脇に衝撃を受け転倒した際に右足を折った。犯人は逃げなかったがわたわたと此方の様子を伺っている時に彼は通りがかったのだ。見た事が無い顔だったが、彼は違ったらしい。同じ学校に通う者だと私たちに説明した。
「彼は私が付き添うので連絡先を教えて頂けますか」
名前をレイムと言うらしい。4つも年下だったが実に大人びていた。関係のない事故にまで首を突っ込み病院までついて来たのだ。世話好きなお節介という印象ばかり残る。
「私を知ってるのか」
「えぇ、まぁ。貴方は目立つので」
「…へぇ」
「髪と、目がこの辺では珍しいですから」
ちょくちょく見かけていたというだけらしいが、どうにも自分の主観ではそれだけの理由でここまで世話を焼くことはないと思ってしまう。善意とは人により様々だ。診察を終え、帰宅することになった私は彼と別れたのだが、別れ際に彼から電話番号の書かれたメモを受け取った。
『080-0016-1850』
「事故のこともあるし、困ったら連絡を」
人との関わりを避けてきたが、ここに来て厄介なものに捕まったようだ。何となく捨てることも出来ず、胸ポケットにメモを突っ込み、松葉杖で孤児院を目指した。
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- 2011/10/23(日) 23:48:05|
- レイブレ|
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