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- 2026/01/22(木) 07:04:31|
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*グレン×ジャック
ぽつりぽつりと降り出した雨。
乾いた石にほんの一瞬後を残してはあっという間に染め上げる。
「もう、梅雨か」
翡翠の目に灰色の雲が映った。
【雨跡】
つい先日まで色鮮やかな花が咲いていたような気がする。
だが今は暑い夏を迎えようとする新緑で一杯だ。雨は嫌いではない。何だか子供の様な悪戯心も手伝って、外へ出た。
傘は差さなかった。
庭の芝が若干ぬかるんでいたがそれにも気を留めない。
「…へぇ」
足元に咲いた小さな花を見つけしゃがみ込む。雑草の類だが、その青い小さな花はとても愛らしく自然と笑みが滲んだ。
「何してる」
突然掛かった声に、雫の滴り始めた髪をかき上げながら振り向く。門の向こうに一台の馬車が居る。声の主はその中のようだ。そちらには近寄らず、その場から少し声を張って返した。
「見ての通りだ。雨に濡れてるよ」
暫くすると、思った通り相手は馬車から降りて門をくぐって此方に来た。
「こんにちは、グレン」
「…何故外にいるんだ」
「君こそどうしたのさ」
「私用で出掛けた帰りだ。そうしたら馬鹿を見つけた」
「失礼しちゃうね全く」
相手の真面目な顔に困った様な笑いを浮かべた。彼の様に整った顔は表情が無いと少し怖い。そんな事を思っていると彼の指先がが頬に触れて来た。温かい手だ。
「冷えてる」
「構わないよ。君が温めてくれる」
「茶化すな」
「はは、本気なのに」
ね?と覗きこんだ瞳が揺れる。
彼は嫌がっていない。少々気恥ずかしくて、困惑しているだけだ。かと言って事に及ぶと此方が防戦一方なのは変わらないのだが。
「性格悪いぞ」
「悪くない。君が好きなだけだよ」
「……」
視線を合わさずに目を伏せ、さも自然な事の様にその言葉を言う。それに対し無言で無表情で一見すると怒って見えるその顔。
「本当に、私は君が大好きだよ」
【雨宿り】
「グレン、コートをこっちへ。あぁギル、彼にタオルを」
大人が二人してずぶ濡れで入って来ると小さな従者が酷く慌てた。雨が酷くなってきたので自分はともかく彼を巻き添えには出来ないと部屋の中に案内したのだ。既に手遅れな程しとどに濡れていたが。
「マスターもタオルを!」
「有難うギル。すまないが浴室の準備をお願い出来るかい?」
タオルを受け取って告げるとこくこくと頷いて彼は部屋を出て行った。「可哀そうに。お前の従者は気苦労が多そうだな」
「…改善の努力をするよ」
否定できなくて唸った。しかし苦笑を浮かべる彼の表情は穏やかだ。彼にとって少々騒がしいこの家は意外にも心安らぐ環境らしい。
「どうした?」
「いや。君も湯に入るかい?」
「私は必要無い。それとも、一緒に入るか」
紅い視線が此方に流れる。髪を拭くふりをしてその視線に背を向けた。一瞬言葉に詰まるがあくまで冷静に応じるように務める。
「へぇ、君も冗談が言える様になってきたのかい?」
「本気にしてもらっても構わないが…、」
笑いを含んだ声と共に彼が近づいてくる。長靴の固い音が心臓まで響くようだった。首筋に視線を感じる。肩に彼の手が掛かった。
「冗談にしていいのか?」
濡れた髪から雫が落ちた。
熱い熱い熱い。耳に掛かった彼の吐息に、全身が硬直した。後ろから回った彼の手が襟元の釦をぷちぷちと外してゆく。緊張に耐えきれなくなった己の手をその手に重ねた。
「今日は随分と性急じゃないか。折角だが丁重にお断りするよ」
「ジャック」
「…当主様は上品にベッドの上でお待ちいただけると嬉しいね」
「仕方ないな」
彼は首筋にキスを落とす。
そしてゆっくりと露わになった鎖骨を指先でなぞって身体を離した。
「お前の言う通り待っているとしよう。逆上せてくるなよ」
「当然。温めてくれるのは君の役目だ」
振り返って薄く微笑む。
離れた体温を名残り惜しく思いながら、彼の居る部屋を後にした。
「良い雨宿りだな」
「どっちにしても濡らす口がよく言うよ」
「仮にも侯爵家の人間が下ネタとはよろしくない」
「ホントの事だろ」
*