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- 2026/01/22(木) 07:04:41|
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*レイム×ブレイク
『幸福』とは貴方と共に生きる事
『幸福』とは貴方より先に逝く事
【花葬】
皆が幾ら慌ただしく働けど、季節は滞りなく廻って来る。
真白かった窓の外は知らぬ内に優しい色彩に姿を変えていた。
「良い日和だな」
温かい光の注ぐ廊下を闊歩しながら窓の外を見上げる。
下界の喧騒を微塵も感じさせない程に遥か上空は穏やかだった。
ポケットから懐中時計を取りだし時間を確認する。
(11時・・・47分)
そろそろこの忌まわしき書類を置いて昼にでもしようか。
書斎に戻ると午前の仕事分であった束を置き、本を一冊と昼食を手に部屋を出た。
ざわさわ、ざわざわ
春の風はほんの数分前より少しばかり強く花々を揺らし始めていた。
今目の前にある樹齢何年とも図れぬこの桜の木も例外ではない。
だがそんな浮世に立つような気分も、すぐさま地上へ引きずり戻される。
「…おい」
太い幹に背を預け、頭を項垂れ眠る男が居た。
制服の胸元も開げて休み時間をフルに活用している事が窺える。
(まぁ、態度としては何時もこんな感じだが)
腰に手を当て溜息をつく。そんな自分の行為もいい加減見収めたい所だ。
休憩時間とは言え、今までこの男は仕事をしていたのだろか。
敏い男なので気付かない筈は無いのだが、軽く肩を揺すっても起きる気配は無い。
少し不安になって顔色を窺う。が、体調が優れない訳ではなさそうだった。
風が切り揃えられた白髪を弄い流れて行く。
叩き起こしてやろうかと思ったが、やはり止めておく事にした。
規則正しい呼吸で眠る彼の隣に腰かけ、昼食を取った。
下から見上げた快晴に艶やかな桃色の花が良く映える。
「こんな穏やかな春を迎える日が来るとは思いませんでしたネェ」
「!―ゴフッ」
今まさに口に入れたパンが喉に詰まった。
涙が滲むほど盛大に噎せた後、恨めし気に声の主を見る。
「…何時から起きていた」
「?最初からですケド」
最初とは何時の事だと口角がひくついた。
やはり自分が来る前からと言うのが正しいのだろうか。
「寝込みを襲うぐらいしないかと期待してましたが、残念デス」
「するか阿呆」
にやりと笑う彼を一蹴しながら、内心何もしなくて良かったとほっとする。
我ながら、日ごろの行いの賜物かもしれないと思った。
「次の春もこんな風だと良いですね」
「…そうだな」
静かな声音に何故か胸がざわつき、返事が遅れてしまった。
「まぁ、次はこの季節すら…という可能性もありますケド」
「馬鹿を言うな」
「解りませんよ。この木も、毎年同じだけの花が咲くとは限らない」
伏せた瞳に睫毛が影を落とした。
その表情は少し哀しげで、何処か儚く、美しいと思った。
それは決して生きる事を投げやりにしてはいないからかも知れない。
彼は落ちて来た花弁を一枚摘み、目の前で眺めた。
「散った者は帰って来ないのですよ」
「そんな事、知っている」
「いいえ、まだまだですネ」
「…仕方ないだろう」
「そう、貴方はまだ若いですから」
にこりと笑った彼はごろりと地面に横になった。
散った花弁で薄紅色の絨毯が出来ており、その上に白い髪が散らばった。
そのまま混ざり消えてしまいそうだ。
「この木は毎年どんな気持ちで彼らを見送るのでしょうね」
「さぁな」
「……ちゃんと考えてます?」
「哲学的な事は解らん」
「私だって知りませんよ。感覚的な問題です」
不満げな彼に同じ返事を返して手元の本を開く。
が、しおりを取った途端に吹いた風でページがばらばらとめくれた。
読みかけのページが解らなくなってしまった。
「…」
「…バチですね、罰が当たったんですヨ。きっと」
くつくつという笑い声が下からする。
敢えてそちらは見ない様にして、本を閉じて立ち上がった。
「…行くぞ。そろそろ仕事だ」
「はいはい」
如何にも重い腰を上げた彼は髪についた花弁をばさばさと払い落とした。
先に歩き出しながら彼がついてくるのを耳で確認する。
「ザクス」
「はい?」
「多分、アレは悲しんではいないだろう…また会えると、分かっているからな」
「?」
「さっきの返事だ」
「――ええ、そうですね」
大した答えは出せなかったが、それでも満足気な声がした。
背中を押す強い風は、多くの死を巻き込んでこの生活を満たしている。
明日もまた多くの花が愛でられながら散って逝くのだろう。
「レイムさん、私桜餅が食べたいデス」
「・・・そこら辺の花びらでも拾って食ってろ」
【花葬】
*レイム×ブレイク
*
花を裏切り縁を結ぶ
【花冷え】
色様々な草花が咲き乱れ始める頃、ふらりとそれはやってくる。
「冷えますネェ」
「春だからな」
空は快晴。
室内から眺める分には外は実に暖かな陽気に満たされている様である。
だが花を揺らす風はさぞや冷たかろう。屋内で寒気がするのがその理由だ。
「…何かおかしくないですカ?」
「この季節は気候が安定しないから道理だという意味だ」
「あぁ…、ナルホド」
しかし毎年こうでは花も難儀なものだと想いながら、山積みの書類に目を戻した。
夕刻。
日が傾きかけた頃に一日の仕事を終える。
「レイムさん」
先行してすたすたと歩く友人を呼び止める。規則正しい靴音がぴたりとやんだ。
「何だ?」
「ちょっと、お茶でもして行きませんか」
彼は少し意外そうな顔をした後、頷いてついて来た。
茜に染まる廊下を二人言葉少なに歩くけば、沈黙も苦痛では無くむしろ空気を
穏やかなものにさせていた。誘う先は自分の部屋である。
他意は無い。何となく、彼と温かい紅茶でも飲みたい気分だったのだ。
淹れたての紅茶の香りと甘い茶菓の間で話題は仕事話から世間話と尽きない。
彼を誘ったのはやはり正解だったと言う事だろう。
「そう言えば今朝の話ですケド、花とは難儀な物だと思いません?」
「何だ、まだ覚えていたのか」
「良いじゃないですか。ねぇ、思いませんか」
「…人から見ればまぁそうだろうが、花は知らない環境とは比較せんからな」
「ふーむ、確かにそうなんですケドね」
彼の性格からすれば予想のつく反応だが、いまいち夢が無い。
そろそろ夕日も沈み、部屋が藍色になりつつある。部屋も冷えて来た。
「寒いデス」
「そうか」
酷い反応だ。この瞬間舞っている花弁はさながら吹雪の氷塊になった事だろう。
「お。見ろ、もう月が出てるぞ」
「へー」
ぐでっとテーブルに突っ伏しお返しとばかりの返事をする。
立ち上がった彼は窓辺に行くかと思いきや、部屋の蝋燭を消して回り始めた。
徐々に徐々に部屋が暗くなる。だがそれにつれ夜空の月は明瞭な姿を現した。
「空気が冷えていると綺麗に見えると言うのは何故だろうな」
「知りませんヨ」
彼は窓の外を興味深げに眺めている。その背に背を向け微量の月明かりを反射して揺れるカップの中身を見つめた。するとその反射がふと無くなる。
「―白いな」
「ッ!」
吐息の触れた項に思わず手をやる。
振り向けば逆光で良く見えないが、困った様に微笑んでいる姿が浮かんだ。
「何してるんですか変態」
「それは、残念だがお前には負ける」
月明かりで青鈍色になった部屋の中で、レイムの冷えた指が首筋を撫でた。
詰めた制服の釦が外されると項に空間が生まれ襟を後ろに引かれる。
開いた空間から覗いた肩口に顔を埋められると肌が泡立つ感覚を覚えた。
「白い、のは・・月の所為では?」
「かもな。だがそれでも白い」
生温かい感触が肌を伝う。濡れた首筋に髪が貼りついた。
そこから熱が広がっていくのを感じる。
視線を月が照らす床へと流し、この先の事を意識すまいと平静を装った。
長年の友人にそれは隠しきれないだろうがその辺は此方のプライドもある。
「レイムさん」
「何だ」
「私達はまだ、『友人』なのでしょうか」
「……」
返事は返って来ない。彼は無言のまま行為を続行した。
上着が床に落ち、後ろから回された手でシャツが広げられていくのを何処か遠くに感じる。
シャツから肩が露出すると、流石に冷えた空気に震えた。
「…男性は、初めてですよ」
「それは、光栄な話だな。当然だが私もだ」
内側のざわめく胸の突起に指が触れ唇を固く閉ざす。
一方の手がズボンのジッパーに触れようとした時、その手を押さえ制止を掛けた。
「…嫌か?」
「イエ、此れでは貴方の顔が…見えないのですよ」
「何だそれは」
そう言いつつ、彼は自分がベッドへ行きたいという事を理解してくれた様だった。
改めて薄暗い天井を仰ぎ見る。
今夜は特に静かな夜だった。
などと悠長に言える状態では無いが、夢の様な現故それも致し方ないだろう。
背中に感じる柔らかな感触に安堵する。
今や彼も上着を脱ぎその息も少し荒い。
だが此方も此方で既に身につける物は白いシャツのみとなっている。
彼に与えられる刺激に僅かな恐怖を感じながらも、身体は素直に悦んだ。
視線の先には片足の膝を立てたその間で彼の頭が小さく上下している。
「…あ、ぁ…ッ」
同性とは言え、柔らかな唇の口淫には太腿が断続的な痙攣を起こした。
聞いた事の無い自分の甘ったるい喘ぎ声に耳を塞ぎたくなるが、唇を噛み締め痛いほどにシーツを握りしめる事で何とかやり過ごした。
唇から解放されると震える足首に手が掛かる。白い脚は肩まで持ち上げられた。
「平気か?」
「…えぇ、」
「力、抜いとけよ」
「ッ!」
暗闇で身体がが弧を描いた。
本来受け入れるべき器官では無い場所に彼自身が押し入り、経験の無い痛みが電流の様に全身を突き抜けた。
上った声は悲鳴に近かっただろう。
緊張した身体の中は彼をきつく締めつけた。若干苦しげな彼の声が耳に届く。
それでも彼は過呼吸気味になった自分を気遣い、他の場所へ愛撫を施し気を紛らわせた。
すると徐々に激痛は快楽へと姿を変え始める。
「ふぁ…、あぁ…ッ」
「ザクス」
「な、です」
「…愛して、いる」
表情は見えない。だが緩く微笑んんだ口元は目にすることが出来た。
熱く火照り汗ばんだ身体が更に温度を高める気がした。
(嫌ですね、少女めいた感情など)
だがここで自分もだと素直に頷いていいものか悩む。
外見こそ大差ないが自分はもう先が短い。今自分が彼を縛っていいのかと。
結局返事は出来なかった。
ただその腕を伸ばし、両手で彼の頬を包む。
驚いた様な顔をした彼を引き寄せ触れ合うだけのキスをする。
今度は切なげに眉を寄せる彼の顔が見えた気がした。
目が覚めるとまだ夜明け前だった。事の後眠ってしまっていたらしい。
月は変わりなく下界の花を照らしていた。その明りで薄っすらと見える落ち行く花が、何とも幻想的で美しい。
隣にいたはずのの彼は暗い部屋の窓辺で、庭の花を眺めていた。
手近にあったシャツを羽織りベッドから足を降ろす。腰の辺りが痛んだが、
構わず彼の許へ歩む。気付いた彼が此方を振り返り微笑んだ。
「今度は月ではなく花ですか?」
「あぁ、綺麗だったんでな」
「私の最期も、こうだといいですねぇ」
穏やかで静かに、彼の居る最期だ。
ついそんな言葉を口にしてしまい後悔する。これでは彼へ負担を掛けるだけだ。
「すみません」
「いや、」
謝罪の言葉に彼は首を横に振った。
だがもう一度窓の外で散る花を見て、彼の頬に雫が伝った。
「…すまん」
「安心なさい。まだ、死にはしませんよ」
先程までの熱はもう身体に残ってはいない。
冷えてしまった今の身体は、ただ胸の辺りだけが焼けつくように熱かった。
【花冷え】
*レイム×ブレイク
ただ、無性に壊したいのです
【マリーゴールド】
愛情と憎悪と劣情と。
緋色の感情を幾重にも幾重にも重ね、重ねては千切ってゆく。
千切ったソレをベッドの上に撒き散らし其処を汚して満たされる心。
日常的生活感漂うただのベッドが何処か非日常的なモノに姿を変える恍惚。
「…下らんな」
口元を歪ませる自分を、何処か他人事の様に見下した。
影が差す。
手には緋色の花束。庭の手入れをしていた使用人から譲り受けた物だ。
昨今の友人はよく出掛け、自分とは以前と比べて話す回数が減っている。
冷めた目をして毛を逆立てていた頃の方が余程傍にいられた様に思う。
彼が豊かな感情を取り戻した事は勿論嬉しかったが、其れによって行動的になった事を思うと素直に喜ぶ事が出来なくなった。
「ザクス」
部屋の戸をノックするが返事は無い。
またしても無人かと思い、溜息をつきながら何気なく手を乗せたノブが動く。
今日は居るのだろうかと暗闇に足を進めると、灰色の視界にベッドが映った。
だが其処に彼は居ない。
「……」
彼はその脇の椅子の上で眠っていた。
その前の机には残り僅かな蝋が微かな灯りを燈して揺れている。
「ザクス」
もう一度その男の名を呼ぶが、疲れているのか身じろぎすらしない。
肘掛けから床へと垂れた白い手に指先で触れた。
掌から手首へとなぞれば、細いそこが以前にも増して痩せた様な気がして眉を顰めた。
片手に持っていた花束の包みを静かに取り払う。
その拍子に数枚の花弁が落ちたが気に留めない。
どうせ散らしてしまうのだ。
暫く使っていなさそうな、皺の無いシーツの上でその花を握り込む。
薄暗い部屋を幽かに照らす灯りが落ちて行く花に綺麗なコントラストを作った。
そうして背後で眠る男に向き直る。
眠りは深い様だが、制服のポケットから白い布を取り出し広げた。
それを眠る彼の瞳に被せ後頭部で縛る。すると彼の手がぴくりと動いた。
「誰です?」
意識半分と言った所か。此方に敵意が無いのを分かっているのか緊張は無い。
返事に迷った時、彼の方が先に「ああ、」と口端を緩めて呟いた。
「何のプレイです」
「特に考えてはいないが」
「外す訳には?」
「残念だが、これは罰ゲームだからな」
首を傾げる彼の頬を捉えて唇を重ねた。
彼は大人しくそれを受け、唇が離れるとくすくすと小さく笑った。
「何を怒っているんデス?」
「そうだな…お前が毎日の様にふらふらしているからだな」
「それで嫉妬ですか。子どもですねぇ」
「事実だろう」
目隠しをした彼の表情は窺い辛い。
だがその下の片方しかない目は確実に細められている事だろう。
座ったままでいた彼の手を引いてベッドへと誘(いざな)った。
彼は床に履いていたものを脱ぎ捨て、素足でベッドへ倒れ込んだ。
ばら撒かれていた花が反動でふわりと舞った。
「…取らないんだな」
「あぁ、コレですか?」
彼が自身に巻かれた目隠しを軽く引っ張った。
「自分で外せるだろう」
「外しませんよ。貴方が外してくれるまで」
此方が先手を取った筈なのに、いつの間にか形勢が逆転しいたようだ。
だが形勢は変われど立場は変わらないとその白い首筋に噛みついた。
「ッ、今日は随分と・・性急で」
「お前が悪い」
緩慢な動きでその薄い身体に触れ、指を絡めて幾重にもシーツに皺を刻んだ。
形を明瞭に浮かばせた鎖骨に舌をなぞらせ時折強く吸いついた。
彼といる、その中でもこの瞬間だけが男故の征服欲を満たしてくれる。
焦らす様な愛撫に彼が身体を震わせ、背を撓らせる姿を綺麗だと思った。
「・・あ、ぅ…ッン!」
細い足の間を割って彼自身を口の中に収めて舌で刺激し吸い上げる。
粘着質な白濁とした液体が零れ出し唇の端から流れ落ちた。
ゆっくりと確実に快楽を与え続け、彼の太腿が痙攣し出した頃にそれを止める。
顔を上げると目を隠しているせいか妙に濡れた彼の唇が艶めかしく映った。
普段の自分らしからぬ高揚に身体の熱が上がる気がした。
「コレ、は…なんです」
彼が手に触れたらしい花びらを指して言った。
「花だ」
「…何の、」
「さぁ、訊けばよかったな」
そうですかと追及を止めた彼に、拾い上げたその花びらを咥えさせた。
「ッ」
「罰ゲームだから、終わるまでにソレを落としたら『友人』をやめる」
そう告げて彼の両足の間に身体を割り込ませる。彼からは動揺が伺えた。
先程の液体で濡れた彼の後孔に、ゆっくりと自身を突き立てた。
「――ッ」
瞬間、中にある自身が強く締め付けられ彼の身体が強張ったのを感じた。
余程花を落としたくないのだろう。
落とすまいと花びらが千切れそうな程に噛み締めている事が窺えた。
シーツを握り込んだ指が蒼白になって行くのも目の当たりにする。
少々意地が悪過ぎたかとも思うが、やはり今日は彼に妥協をしてもらおう。
限界が近づいた時、彼は此方の背に両手で縋りついてきた。
汗で濡れて額と首筋に髪が張り付いている。
本来白い髪が、今は?の明かりで少しばかりオレンジに染められていた。
「…ン、ぅ……ッ!!」
全身が痙攣し、自分の背に爪を立てて彼はイった。
此方も彼のナカに吐き出し身体を震わす。二人の息遣いだけが部屋に残った。
僅かな余韻で不規則に体を震わす彼の目元から、生理的な涙が流れていた。
夜が明ける少し前に眠る彼の目隠しを外した。
(本当に、此方が外すまで取らなかった)
涙のせいか、その目は少し腫れて見える。少々無理を強いたかも知れない。
謝罪の気持ちで目元を拭うと、ふと唇に目が留まった。
そこは中心に近い部分が紅でも塗ったように薄く朱に染まって見えた。
彼は最後まで噛み締めた花びらを離さなかった。
その時に色が付いたのだろう。
「すまなかった」
本当は知っていた花の名前と、その意味を彼に残さぬようにと想いを込めその唇にキスをした。
【マリーゴールド】
それがとても大切だから
*マリーゴールド=悲しみ
*レイム×ブレイク
*山も無くオチも無く
オジサンは一枚上手
【rest】
国の法に則り、当然私にも休日という物が有る。
働いている私の姿しか想像がつかないだろうがそれでは過労死が必至だ。
だからと言う訳でもないが今は料理なんぞをしようとしている。
「何を作るんデス?」
「シェパーズ・パイだ」
「ほう、イギリス料理ですか」
背後から鬱陶しく首を突き出してくる彼の頭をぐいぐいと押し返した。
料理中は気が散る上に熱くて手が進まない。要するに邪魔なのだ。
羊のひき肉を作り煮込もうと動かす肘が背後の彼に引っかかる。
「良いから下がってろ」
言ったものの、ワザとらしいが肩を竦ませて引き下がるその後ろ姿に溜息をつく。
「…そこの茹でたポテトを潰してくれ」
「―了解です」
「おい待て、皮を剥いてからだ」
「あー、」
皮つきのまま潰す奴があるか。
料理が似合わないとは思っていたがまさかこれ程とは。
何にしても良い年をした男がじれったい動きで皮を剥く姿は可愛くない。
可愛くはないが、危うく口元が緩みそうになり慌てて引き締めた。
何て事だ。自分の動揺に頭が痛い。
「料理は芸術だとか芸術は爆発だなんて言葉があるが基本は押さえてくれ」
「ほう、成程そんな言葉、ガッ…!」
忠告に進んで反抗しようという空気を読み取った私はその鳩尾に一発喰らわせた。
(大して力の無い私の攻撃を何故運動神経のいい彼が避けられないのか不思議だ)
そうして決して順調とは言えない鈍行列車のようなテンポで料理は進行する。
奇跡的に良い具合に焼けたパイをテーブルに並べ、虚しくも男二人でそれを囲む。
「何でしょうねこの新婚的な仕様は」
「…頼むからツッコむな」
不満がある訳ではないが私の面目を保つために言わなければならない。
それに男同士とて友人なら食事をする事だってあるはずだ。
「別に、自然な事でしょうに」
「お前が改めて言うからだろう」
「事実にします?」
「勘弁してくれ」
落ち込んだ顔をするとはどういう事だ。
「男女のような関係はいらない。そもそも子供なんて出来ないし、私はお前の」
「私の?」
サクッと軽い音。彼がナイフでパイを割っていた。
「――友人だ」
「…おやまぁ」
「不満か」
「いいえ?十分ですよ」
そんな穏やかな顔を浮かべられると流石に達観したような、年上だと感じてしまう。
「今、年寄り臭いって言いませんでしたカ?」
「空耳だ。というか何も言って無い」
私もナイフとフォークを手に取りパイを割った。芳ばしい良い香りだ。
しかし肉をフォークに刺し口に運びかけた所でストップ。
彼がにんまりとして同じものを差し出している。無言で見つめて結局無視した。
「素直じゃないですネ」
「空耳か?」
「いいですよもう」
手は引っ込められ、それは口に放り込まれた。
黙々と食べる様は傍から見れば誤解を招くだろうが内心は至って穏やかである。
無意味な会話こそ有意義で面白い。
「ご馳走様でした」
空になった皿を見て、正直食える物が作れて良かったなどと思ってしまった。
取り敢えず『食材』に謝罪する。
安価なワインを開け、また無意味な会話を繰り返し、ふとグラスを傾けるその手を取った。
「何です」
「ここ切れてないか?」
小さいが薬指の側面に薄っすらと赤く細い線が見える。
「皮の時か?」
「皮の時ですね」
今の今まで気付かなかったのだから、痛みは無い様だ。
その指に口を寄せるとクスクスと笑いながら止められた。
「血は出ていませんヨ」
「知ってる」
「まだ昼間ですよ」
「それも知ってる」
「いつならいい?」
「此れを片付けて部屋を掃除して夕食をとってシャワーを浴びて歯を磨いて――」
「分かったもういい」
何でも無い日常でも羅列されると疲れる。手を離して大人しく食器を運んだ。
「全く貴方は分かりやすい」
「お前と違ってな」
日が傾くのもいいが、もう少しこの時間を楽しむのも悪くないかも知れない。
【rest】
さて、次の休日は何をしようか