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- 2026/01/22(木) 07:05:02|
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*レイム×ブレイク
一緒に居る理由なんて分からなくていい
【Distance of dear】
どうしてあの二人は一緒につるんでいるのだという小言を聞いた事がある。
さほど昔の事ではないが、最近の事でもない。そんな時期に聞いた気がする。
と、言われた。
「疑問に思う人間は正常だな!」
「…どういう意味ですカ!」
「そんな事より早く寝グセを直せ!」
脹れっ面と真顔が並んでいる様を見れば一方が遊ばれている事が直ぐ分かる。
生憎ここは室内であって誰も見る人間など居ないのだが傍から見ればそれなりに微笑ましく、それなりにアンバランスに見えただろう。
二人して鏡の前であくせくと歯を磨いていたりなんてしたら、確実だ。
「酷いですヨ、貴方がしっかり起きるのを期待してたのに」
「あれだけ疲れた上にお前が何度も私を蹴飛ばし睡眠を妨害するからだ」
「私はお上品に寝ていますって」
「嘘つけ!寝相悪過ぎだぞあれは」
昨晩余り他人には言えない事をあれやこれやとやった末就寝が遅くなった。
翌日仕事があるにも関わらず長引いた事は互いの責任だが一方的に安眠妨害をされた身としては流石に受け入れ難い物がある。
「貴様に蹴られた腹がだな…そこじゃないもっと上だ」
「あぁ、此れデスネ」
動き回った証拠だ。頭頂部のやや後ろに盛大に跳ねあがった髪の束がある。
やはり確かにこんなに手間の掛る奴と一緒に居れば周囲の疑問も頷けた。
「そう思われるのも私の人徳だろうか」
「…何か言いました?」
「何も。…直らないならいっそ風呂に入ってきたらどうだ」
いい加減口の中を濯ぎブラシを置く。
未だ寝ぐせと格闘する彼が目に余り風呂の方へとぐいぐい背を押した。
「それこそ遅れてしまいマス」
「仕方ない、私が先に行って誤魔化しておくから早く行って来い」
「ハイハイ。有難うございマース」
手間のかかる男を風呂場へ放りこむとクローゼットへ向かった。
行儀よく並び皺一つ無い制服を取り出しさっさと袖を通す。
テキパキと何かの見本の様な動きで身支度を整えると漸く職場へと向かった。
ある程度の予想はしていたが彼が遅れる事を気にする者は少なかった。
日ごろの行いか、遅れると言うより何処かでふらついているだろうと言うのが大方の意見の様だ。
わざわざ遅刻の言い訳をする必要も無いので放っておいた。
「レイムさん」
「日ごろの行いが悪い事が幸いしたな」
「…頭でも打ちましたカ?」
「まぁ今日に限っての事だが」
「ハイ?」
声を掛けた途端に意味の解らない事を言われて立ち尽くす彼はさておき今日も元気に盛大に山積みにされた報告書やら何やらを片付けなければならない。
「ほれ、さっさと行くぞ」
「いだだだだ」
突っ立ったっているその耳を摘みぐいぐいと引っ張った。
多少痛かろうがコレは至って優しい報復という事にして頂きたい。
此方もどこか頭が痛いのだ。
「…レイムさん」
「…何だ」
「貴方ちょっと顔赤くありません?」
「そんなの、自分じゃ知らん」
「赤いですよ」
「私は別になんともない」
「あーもー」
「――痛ッ!」
ズビシと頭に手刀が見舞われた。
強い衝撃ではないがそれなりの痛みに呻く。ついでに眼鏡もずれた。
「涙目の貴方も悪くないですが、ほら、戻りますヨ」
「い、今から帰っ――うぉおお!」
これぞ攻守逆転というのか、今度は自分が引きずられる羽目になっていた。
この男の見かけからは想像の付かない腕力に観念しつつ今朝慌てて出て来た部屋に戻った。
何とも言い難い虚しさはこの際仕方が無い。
「ホラ、さっさと制服を脱いで横になる」
「そんな大袈裟な…」
「早く仕事に戻りたくばさっさと寝なサイ」
「……」
確かに早く戻りたい。身体もやはり不調な様だし寝た方が良いに決まっている。
一瞬の逡巡の末どうせ逃げられもしないのだから休むことにした。
「まぁ、お前の仕事を代わりにやり過ぎたと言えばいいしな」
「ちょっと、酷いですよ。ワタシが悪いみたいじゃないですか」
「悪いだろう」
眼鏡を外し制服を脱いでベッドへ横になると、途端に眠気が襲ってきた。
「何か要るものは?」
「何も…あぁ、水だけ頼む」
もし熱が上がれば喉が渇くだろうと思ったのだ。
特に気遣う風でもなく彼は淡々としてグラスに水を入れて来た。
特別気遣われない分こちらも変に気疲れすることもないので楽である。
何も言いやしないのにそれを直ぐ近くの机に置きベッドの脇に座った。
しかしやはり熱が上がる前に飲んだ方が良いかと思い結局薬を取り出して飲んだ。
「他には?あ、添い寝でもしますカ?」
「勘弁してくれ…今朝のでもう十分だ」
何時に無く楽しげなのは解って言っている証拠だ。質の悪い。
「…そう言えば、ピアスは外さないんですカ?」
「?――あぁ、大丈夫だ。別に危なくない」
「ほー」
「何だ、付けたくなったか?」
少し意外な反応にそう言ったが、彼はにやりと笑った。
「いえ、結構ですよ。貴方が付けてますから」
「何だそれは」
小さく苦笑して、目を閉じた。そろそろ瞼が重くなって来ていた。
「ところで、お前は何時になったら仕事へ戻るんだ?」
「…バレましたカ」
「さっさと行って来い馬鹿」
「レイムさんってばイケズ」
「いいからさっさと行け」
「ハイハイ。解りましたヨー」
猫背に去っていく後ろ姿を見送ると小さな笑いが吹き出した。
口数はまぁ人並。
それ程盛り上がる会話もしない。
喧嘩の数はそれなり。
互いの過去は互いにさほど知らない。
それでも信頼が置けるし安心がある。
彼とつるむ理由はそんな所だなと思いつつ、普段より幾分良い気分で眠りについた。
【Distance of dear】
気にしていないから一緒に居られる
*レイム×ブレイク
*
はらり はらり
【灰桜】
長いけれど短い。
掬いあげてはさらさらと落ちてゆく白い髪に図らずも手が震えた。
「だからこのままでいいと」
「そうはいかん。オズ様の社交界デビューという正式かつ重要な場で、」
「あーハイハイすみません続けて下さい」
縛ってやるから座れと言われて座ったのは何分前だったか。
見えもしない鏡の前に座りただレイムに髪を引っ張られるのを感じていた。
「前のように長ければ楽だったんだがな」
「何年前の話をしてんですか」
「あの時は鬱陶しいくらい長かったのに…いや、止めよう」
「ハハ、そうして下さい」
見えない物を察してくれるのは有り難かった。
長年の付き合いがあるとして、ここまで気心の知れる相手にはそう恵まれまい。
御蔭でこの長い時間も退屈では無い。
結うというより詰めるという表現が正しい作業に没頭する彼は相変わらず前進が無くまとめては落ちる髪に彼の眉間はきっと皺だらけだろう。
「ホント大人になりましたねぇ」
「…何だ急に」
「そりゃ目も見えなくなる訳デス」
「……お前な」
「年寄りの老眼みたいに思えばいいんですヨ。自然な事でしょう?」
「…。ま、じーさんなのは確かだな」
「あ、イタタタ」
止まっていた手が動き出す。
先程よりややぶっきら棒な手つきなのは少し悪乗りが過ぎたからだろうか。
髪を引かれた頭が前後にぐわんぐわん揺れた。
「留める紐の色は希望あるか?」
「そう言うのはあまり関心が無いので…任せますヨ」
「浮ついたお前にぴったりのピンクなんてどうだ」
「憐れな年寄りにお慈悲をお願いします」
いくら見えないからってそんな色は勘弁願いたい。
許しを請う様に身を屈めると、彼の手から髪が落ち結局お叱りを受ける事になった。
「ザクス、お前衣装用のクローゼットとか有るか?」
「部屋を入って左手デス」
「これか?」
「そうソレですそれ」
足音でどちらに動いているのかを察しながら会話は自然と繋がっていく。
ベッドに座りレイムが物色しているのをただ待った。待っているだけだが何か楽しい。
少し離れた所で彼が何やらぶつぶつ言っているのが聞こえた。
「これでいいか…」
「ちょっと、いい加減じゃないでしょうね」
「そんな訳あるか」
立ち上がると洋服が前に押しつけられる。うーんと唸る声が目の前に零れた。
「…何かご不満でも」
「もう少し丈の長いほうがサマになる気が」
そんなに気にしなくてもという言葉を言うより早く彼はクローゼットへと向かっている。
「こっちを着てみてくれ。小物はまた私が用意しておく」
「君って案外凝り性ですよネ」
着ていた上着を脱いで袖を通すと、先程までの私服よりずっしりとした重みを感じた。
見えないので何とも言えないが流石に正装は身が締まる。
「あ、こら動くな」
つい移動しようとした袖を引かれて向き直らされる。
襟元を正されリボンタイらしきものを通された。しゅるしゅると音が耳元に鳴っている。
会話が盛り上がるでもなく静かな部屋で淡々と進められていった。
「―やっぱりタイじゃなくてスカーフだな」
「…もうそれは、後にしませんか」
するすると抜けて行く襟のリボン。その音を聴いていると少々遊び心が湧いた。
それを引く彼の手を取って口を寄せる。意図は簡単に伝わった。
「いいのか?直前に焦る事になるかも知れんぞ」
「大丈夫ですヨ。何たってパーティーは“明日の午後”ですから」
見えないが、視線を交わすと開いた首筋にキスが落とされた。
明日着る服が汚れては不味いので早々に脱がされ放られた。
壁に追い込まれ不本意な事に180cm以上もの長身に見下ろされる形だ。
何時もの様にベッドに寝ていれば意識しない事にも改めて気が付いてしまう。
舌を絡め合うキスは名残り惜しげに互いの唇を唾液の糸で繋いで離れた。
「―いッ、ちょ…出来れば布団の上が良いのですが」
「誘ったのはお前だろ。何時もと違ってもいいんじゃないか?」
「いや、明日立てなくなりますって…!」
両足の間に彼自身の足が割り込む。背が壁に押しつけられて少々痛んだ。
シャツの緩んだ胸元から冷たい手が滑りこんでくる。
肌をきつく吸われ、その小さな痛みがキスマークを付けられた事を告げた。
首筋・胸・口内と愛撫をされながらスラックスの前が寛げられ身体が震える。
「…ぅ、あ…ちょっと、まッ――」
自身をゆるく握られ太腿に快楽の波が押し寄せた。
しばらく直に手で抜かれた後、その指先が更に下の後膣へと滑り込んだ。
ぬるっと体内に侵入した異物の感覚が身体を支える足の力を奪って行く。
「…ふ、くッ…ア」
「――おい、」
ぐらついた身体をすかさずレイムの腕が支えた。
気付けば腰に添えられた腕に殆んどの体重をかけてしまっていた。
「大丈夫か?」
「よくも白々しく…だからベッドでと」
「そう睨むな。お前なら大丈夫だろう」
「そんな事で買いかぶられて、も」
強い刺激に思わず唇を噛む。卑猥な水音が徐々に聞こえ始め身体が火照った。
先の会話も虚しく遠慮の無い指の挿入が変わらず続く。
緩んだ口元から零れた唾液を拭う事さえ出来なかったが直ぐに彼が拭ってくれた。
「そう、言え…ば、見えない君とするのはッ―初めてです、ね…」
「…あぁ、そうだな」
苦く笑った口にキスをされた。それ以上は言って欲しく無いらしい。
暫くすると指が抜かれより質量の大きい彼自身がソコに宛がわれた。
するとここに来て初めての違和感を自覚した。
(――恐怖)
目の前に居るのは確かに「彼」であるのに見えない暗い影が不安を呼ぶ。
らしくもなく、縋る様に彼の腕を握りしめた。
「…ザクス?」
「足に力が、入らないだけデス…大丈夫ですよ」
此方を気遣う様子が伝わってくる。
しかしゆっくりと彼が内側へと入って来ると、それも考えられなくなった。
「ひ、あ…ぁ……アァッ」
突き上げられ、自分の体重で更に奥へと打ちつけられる衝撃に視界はブレた。
今まで感じた事も無い快楽に理性が飛びそうになる。
だが先程の自分の発言に残っていた理性が覚醒した。
縋っていた両手を目の前に居る彼の頬へと伸ばして触れる。温かかった。
「ねぇ…貴方は、いまどんな顔を、してます…?」
「どんな、って」
「ほら、自分が今どんな顔をしているのか言ってごらんなさい」
「…な、どうして」
「今の…君が知りた、いのです…記憶の、残像ではなくてね」
言って哀しくなったが言葉にしなければ仕方の無い事だ。
真意が伝わったのか、暫く黙っていた彼は言い辛そうに重い口を開いた。
「今は、その…多分眉を寄せて、顔が赤くて…困った、顔を…」
限界か。
きっと「今」は穴があったら入りたいという顔をしているに違いない。
「ハイハイご馳走さまデシター」
「おま…ッ」
「…ありがとうございます」
「――あぁ」
辛くて寂しいが、温かい。散っていく桜を見る様な気分だ。
抱き寄せられた身体に、より彼を感じ再び快楽の波へと飲まれていった。
「…いたいです」
「……。すまん」
「まぁいいですケド。可愛いー君も見れた事ですし」
「な!」
「あぁほら眼鏡落ちましたヨ」
かくして早朝の痛みは暫く引きずる事になる。
しかし再び髪を結う彼が会場へ出る直前まで苦労していたので良しとした。
【灰桜】
*レイム×ブレイク
愛しい隣人へ
【Benevolente】
私の隣人は可愛くない。
そして美しくもなく、清楚でもなく、可憐でもない。
甚だ鬱陶しく煩い男だ。
自分より遥かに年寄りだし、老い先も短い。
他と違う所と言えば彼が友人であるという事だろう。
身体の心まで冷える季節。
身体を縮こまらせながら歩く庭はひっそりと静まり返っている。
芝の上に薄っすらと積もった雪が何処か神秘的で、且つ寒さを助長させていた。
好き好んで外に出る者と言えば庭の隅にいる庭師と今宵愛を伝える支度をする人々だ。
「綺麗だな」
白い息を吐きながら手をすり合わせ僅かでも暖をとろうと試みる。
結局それはほとんど無駄に終わるのだが、今は外のこの景色の中に居たかった。
「そんなに風邪ひきたいんですカ?」
「…違う」
「そんな薄着じゃそうとしか思えませんって」
本当は先程から耳に入る微かな足音に気付いていた。
無視をした訳じゃない。ないが、声を掛けてくるのを待っていた、訳でも断じてない。
振り向くとマフラーらしき布を片手に持った男が首を傾げて笑っていた。
「ザクス、私はお前よりは若いからだい―」
「と言っても微妙な年齢じゃあないですか」
「いや普通に若いだろう。お前との差なんて…」
「ハイハイ鼻赤いですよ。いいから素直に礼を言いなサイ」
「何十歳…、すまん」
マフラーを首にかけると寒さが少し和らいだ。
「ほう…綺麗ですね」
隣に立った彼が呟く。
思わぬ反応に目を配ると彼はその目を細めて目前の広さを見ていた。
「此処は昔、君とお嬢様が私を追いかけてきた場所ですネ」
「…あぁ、お前がぼけっと雪まみれになってた時か」
「ぼけっとなんてしてませんでしたヨ」
「いや。ぼーっと呆けた顔をしていた」
「じゃあ今の貴方とでお相子ですね」
「意味分からんぞ」
眉を寄せたって彼の態度が変わるはずもなく。
ただ頭上から深々と降り続ける雪だけがどんどんと景色を変えてゆく。
冬の草木の上や枯れた枝の上、家々の屋根を白一色へ染めていた。
違うものが総て同じものに見えてしまうような、不思議な感覚に捕らわれる。
「―今日は何の日かご存知です?」
「当たり前だ」
「ほう。どなたか想い人でも居るんですカ?」
「さぁな」
「あ。浮気者ー」
「どうしてそうなる」
「そういう反応は女性にしちゃ駄目デスヨー」
「お前は男だろうが」
「だから忠告ですってば」
屈んで顔を覗き込んでくるな。やはりちょこちょこと鬱陶しい男だ。
じとっとその意味深な顔をみやり、そろそろ頭上の雪も酷いので移動した。
「もう、中へ行こう」
部屋の中に入ると暖炉の火にあたった。
手が霜焼けになりそうだった。彼はといえば寒くないのか窓際に陣取っている。
「レイムさん、ちょっと此方へ」
「?」
窓を見ながら此方へ手だけをよこして来た。
何をする気だといぶかしみながら名残惜しい暖炉の傍を離れる。
隣まで歩いて行くとにやりと笑う顔が振り向いた。
「ほら、コレをどーぞ!」
「何…冷たっ」
手に渡されたのは氷の塊だ。
折角温めた手が一気に冷える。だがその氷はよく目にする物とは違った。
「これは、スミレか?」
「綺麗でしょう?庭師の方に頂きました」
氷の中には薄紫のスミレの花が2,3枚折り重なって入っていた。
偶然水の中に固められてしまったのだろうが、綺麗なガラス細工のようだ。
しかしせめて布か何かに乗せて渡して欲しかった。
「何か…ガラスの瓶か何かに入れて冷やしておかないと」
「いいじゃないですか解けても。乾いたら押し花にして栞でも作って下サイ」
「いや、しかしな」
少々勿体無い気がしないでもない。
作ろうと思えば幾らでも自分で作れるが、自然に出来たというのが良いのだ。
「気になさらず。その方が長持ちするでしょう」
そう言いながら彼は私の赤くなった手から氷の花を受け取った。
脇にあるテーブルの上にハンカチを敷き、その上に氷を乗せる。
「本日のワタシからの贈り物デス。大事にしてくださいよ」
彼の綺麗な微笑が近づき、それは直ぐに視界から消えていった。
【Benevolente】
彼の本当に憎いところは、何より私の目を惹くことだろう