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- 2026/01/22(木) 07:08:58|
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*レイム×ブレイク
愛しい隣人へ
【Benevolente】
私の隣人は可愛くない。
そして美しくもなく、清楚でもなく、可憐でもない。
甚だ鬱陶しく煩い男だ。
自分より遥かに年寄りだし、老い先も短い。
他と違う所と言えば彼が友人であるという事だろう。
身体の心まで冷える季節。
身体を縮こまらせながら歩く庭はひっそりと静まり返っている。
芝の上に薄っすらと積もった雪が何処か神秘的で、且つ寒さを助長させていた。
好き好んで外に出る者と言えば庭の隅にいる庭師と今宵愛を伝える支度をする人々だ。
「綺麗だな」
白い息を吐きながら手をすり合わせ僅かでも暖をとろうと試みる。
結局それはほとんど無駄に終わるのだが、今は外のこの景色の中に居たかった。
「そんなに風邪ひきたいんですカ?」
「…違う」
「そんな薄着じゃそうとしか思えませんって」
本当は先程から耳に入る微かな足音に気付いていた。
無視をした訳じゃない。ないが、声を掛けてくるのを待っていた、訳でも断じてない。
振り向くとマフラーらしき布を片手に持った男が首を傾げて笑っていた。
「ザクス、私はお前よりは若いからだい―」
「と言っても微妙な年齢じゃあないですか」
「いや普通に若いだろう。お前との差なんて…」
「ハイハイ鼻赤いですよ。いいから素直に礼を言いなサイ」
「何十歳…、すまん」
マフラーを首にかけると寒さが少し和らいだ。
「ほう…綺麗ですね」
隣に立った彼が呟く。
思わぬ反応に目を配ると彼はその目を細めて目前の広さを見ていた。
「此処は昔、君とお嬢様が私を追いかけてきた場所ですネ」
「…あぁ、お前がぼけっと雪まみれになってた時か」
「ぼけっとなんてしてませんでしたヨ」
「いや。ぼーっと呆けた顔をしていた」
「じゃあ今の貴方とでお相子ですね」
「意味分からんぞ」
眉を寄せたって彼の態度が変わるはずもなく。
ただ頭上から深々と降り続ける雪だけがどんどんと景色を変えてゆく。
冬の草木の上や枯れた枝の上、家々の屋根を白一色へ染めていた。
違うものが総て同じものに見えてしまうような、不思議な感覚に捕らわれる。
「―今日は何の日かご存知です?」
「当たり前だ」
「ほう。どなたか想い人でも居るんですカ?」
「さぁな」
「あ。浮気者ー」
「どうしてそうなる」
「そういう反応は女性にしちゃ駄目デスヨー」
「お前は男だろうが」
「だから忠告ですってば」
屈んで顔を覗き込んでくるな。やはりちょこちょこと鬱陶しい男だ。
じとっとその意味深な顔をみやり、そろそろ頭上の雪も酷いので移動した。
「もう、中へ行こう」
部屋の中に入ると暖炉の火にあたった。
手が霜焼けになりそうだった。彼はといえば寒くないのか窓際に陣取っている。
「レイムさん、ちょっと此方へ」
「?」
窓を見ながら此方へ手だけをよこして来た。
何をする気だといぶかしみながら名残惜しい暖炉の傍を離れる。
隣まで歩いて行くとにやりと笑う顔が振り向いた。
「ほら、コレをどーぞ!」
「何…冷たっ」
手に渡されたのは氷の塊だ。
折角温めた手が一気に冷える。だがその氷はよく目にする物とは違った。
「これは、スミレか?」
「綺麗でしょう?庭師の方に頂きました」
氷の中には薄紫のスミレの花が2,3枚折り重なって入っていた。
偶然水の中に固められてしまったのだろうが、綺麗なガラス細工のようだ。
しかしせめて布か何かに乗せて渡して欲しかった。
「何か…ガラスの瓶か何かに入れて冷やしておかないと」
「いいじゃないですか解けても。乾いたら押し花にして栞でも作って下サイ」
「いや、しかしな」
少々勿体無い気がしないでもない。
作ろうと思えば幾らでも自分で作れるが、自然に出来たというのが良いのだ。
「気になさらず。その方が長持ちするでしょう」
そう言いながら彼は私の赤くなった手から氷の花を受け取った。
脇にあるテーブルの上にハンカチを敷き、その上に氷を乗せる。
「本日のワタシからの贈り物デス。大事にしてくださいよ」
彼の綺麗な微笑が近づき、それは直ぐに視界から消えていった。
【Benevolente】
彼の本当に憎いところは、何より私の目を惹くことだろう