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- 2026/01/22(木) 07:10:05|
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*オズ×ギルバート前提・ヴィンセント×ギルバート
*暴力表現注意
私が消えていく
【Cave In】
鼻の奥をつく薬品の香り。
明瞭ではない意識と景色の存在しない黒の中で、鴉との契約シーンが回想する。手足は射竦める様な眼と鎖に縛られ動けない。首筋に走るのは肉が抉られ裂かれていく感覚とひんやりとした痛みだ。
「…ッ」
痛みに意識が覚醒するが、視界は開けない。幾分過去の契約した当時と時代が錯誤していた。今は既に主と再会している時であり鴉は出てきてはいないのだ。
ならば痛みの原因は?
「起きた?…あぁ、起きたんだね」
「…ヴィン、ス…?」
直ぐ耳元から聞こえる優しげな声に見えない視界が少しばかり晴れた気がした。
「目隠ししてごめんね。でも取ってあげる訳にはいかないんだ」
優しい声だ。しかしその声には恐怖しか感じない。実の弟なのだ。彼の性格はよく分かっているつもりだった。
「兄さんと最近余り会わないじゃない。寂しくって」
横になった自分の頬を指先がなぞる感触。
ぞわりと肌が粟立つような感覚を覚え震えた。
「兄さんは痛いのが好きでしょう?…でもやっぱり見えると怖いだろうから」
偶に歯医者さんが目隠しをしてくれるのと一緒だよと彼は続けた。彼は自分がいている事を悪い事などとは思っていない。ただ純粋に、優しさと欲を表現しているだけだ。
「首、ちょっと見えちゃうかもだけど、いいよね」
首。そう言われて漸く先ほどの痛みが首を噛まれたのだと思い至った。
(…手、手は)
右手は動いた。左の手は、何処かに繋がれている様だ。動くと何やら冷たく硬いもので手首が絞まり、肉へ食い込む痛みに呻いた。
「利き手が動くのは僕の優しさ…あぁ、動くの『も』か」
至極楽しそうな声が耳に落ちてくる。彼の「楽しいこと」とは恐怖そのものだ。愛しげに頬を撫でていた指が首の傷をなぞりそのまま隙無く着込まれた襟元へ行き、タイを引く。その布擦れする音が妙に大きく聞こえた。
「…な、に……」
「さっき言ったでしょう?『痛いのが好きだよね』って」
「――いッ!」
繋がれた手首を引かれ身体が大きく動いた。肌の表面を削られる痛みに歯を喰いしばる。しかしその唇も直ぐに相手のそれに塞がれ開かざるを得なくなった。
「ふ、…ぁ…や、…ッ」
口内を舌が蹂躙していく。逃れようとも顎を捉まれ手を繋がれた状態ではどうしようもない。せめて自由なほうの手でヴィンセントの身体を押し距離を取ろうと抵抗をした。漸く開放された時には酸素を十分に奪われ顔面が上気した状態だった。
「可愛い、兄さん…」
手を離された身体は床へと押し倒される。固く冷たい床は背に痛みを与え恐怖を煽った。上着を脱がされシャツのボタンが外されていくのが分かった。ひんやりとした空気がむき出しにされた肩を震わせる。
「や…だ、ヴィンス…」
「怖がらないで。…んー、怖がって欲しいのかなぁ」
此方と話しているのか自問しているのか境界があやふやな言葉だった。制止を請うた所で無駄なのはわかっているが、それを意識せず、口に出さずにはいられない。血の繋がった兄弟なのだ。背徳心と、主の顔が脳裏を過ぎった。
「今、何考えてた?」
「……ッ!」
「言い直そうか。誰の事…考えてた?」
耳に吐息が掛かるほど近くで囁かれた言葉。背筋が戦慄するにも関わらず鼓膜に響いた低音に脳が痺れる様だ。その問いに答えられずにいると彼は意に介した様子も無くベルトに手を掛けた。
「なッ…!」
下着ごとズボンが下ろされ思わず身を竦めた。上着は手枷のせいで腕に引っ掛かったままであり、下半身は何も身につけていないという格好に羞恥心で身体が火照りだす。一人暗がりの中で膝を擦り合わせるようにしていると薄い嘲笑が聞こえた。
「恥ずかしいの?大丈夫、直ぐ気にならなくなるよ」
「や、離せ……ッ」
膝を捕まれた途端、反射的に振り上げた手がパンッと渇いた音を鳴らす。微かな低い呻き声にそれが彼に当たったのだと知った。
「……ヴィ、…」
「ホント…可愛いよねギルってば」
口角が引き上がるような声。大きく膝を広げられ彼の目前に性器を晒す。視線を感じ熱を持ち始めるそこから必死に意識を逸らそうと思考をめぐらした。しかし胸の突起に触れられた瞬間、その苦労も泡と化す。
「ん…ッ…」
男の手が胸を這う感触。同時に生暖かい舌が尖りを舐め肌を唾液で濡らしていった。理性が反発をする中で身体の中心は既に熱くなり始めている。身体を引こうとしていた筈が胸を突き出すような体制にすり替わっていた。十分に愛撫をし、胸を離れた手が性器に触れる。そのわずかな刺激にさえ身体は大袈裟なほど大きく跳ね、緩急をつけ上下に擦られると意識が引きずられ始めた。
「ねぇ、目の前でイってみせてよ」
「だ、誰が…ッ」
言葉を遮る様に性器をきつく握りこまれ仰け反る。そのまま先程までとは比べ物にならない強さで愛撫を始め、そこからは次第に卑猥な水音が聞こえ出した。
「く、…あぁ…ぁっ」
視覚を奪われた状態で余計に意識してしまう。口から零れ始めた自らの甘い声に嫌悪しながらも抗え切れなくなりつつあった。力の入らない手で必死に彼の手を掴むと、意外にもそれは叶えられた。
「―い、アァッ!」
一瞬の気が抜けた瞬間、激痛が訪れる。濡れた彼の指先が本来受け入れるべきではない所から胎内へと押し入って来た。肉を無理やり押し広げる痛みが全身を貫き、視界が揺らいだ。
「あれ、本当に指だけでイっちゃった?」
僅かだが自らの腹を汚したそれに霞んだ意識のまま驚愕する。強要されたとはいえ弟の目の前で達したことへの後悔や羞恥の念が押し寄せた。だがその間すら許されず、腹の精液を掬い上げた手が再び下肢の間へと滑り込む。
「まだ、イけるんじゃない…?」
「も、ぅやめッ…ンぅ…ぁ…!」
揶揄するような言葉と共に自らの精液を塗りたくられると、再び中心が熱を持ち始めた。そのまま胎内に指が突き入れられ、乱暴に掻き回される。
「…イッ…あ…ぁ…う、ンッ」
「キツイね、ギルの中。何本挿いってるか分かる?」
「そ、んな…」
「言って」
「…ん、…あぁ…さ、…に…2本…っ」
「そう。正解」
「ひ、…ぐ、ぅ!」
「痛い?でも、好きでしょう?」
泣き声にも近い喘ぎと相対するように心底嬉しそうな声が降ってくる。身体の中の異物に犯されそれを嫌悪しながらも、痛みの中に快楽を見つけ出し始めていた。掴まれた足の間で粘着質な音が鳴り止まない。そうこうしている内に指が引き抜かれ指よりも遥かに熱を帯びた物が濡れそぼった其処に宛がわれた。
「ッひ、ぁ…や…ア”ァッ!」
自分の声とは思えない程の啼き声があがった。ゆっくりと、確実に胎内を圧迫しながら押し入るそれは意識が揺らぐほどの痛みを伴った。もがく足はしっかりと固定され高く掲げられる。より奥へと無遠慮に侵入するそれはきつく締まる胎内に構うことなく最奥へと辿り着く。波打つ痛みと快楽で生理的な涙が零れた。
「泣かないでギル…すぐ良くなるよ」
異物が徐々に動き出す。一度箍(たが)の外れてしまった扉はなかなか閉まらない。唾液に濡れた唇は開いたまま、淫猥な声を発し続けていた。揺さぶられ霞の掛かった思考に主の姿が浮かぶ。今、彼はどうしているのだろうか。今の自分をどう思うだろうか。男に犯され乱れる自分を。
「ふ…ぅ…ぁ…あぁ…オ、ズ――」
―パンッと乾いた破裂音がした。
突然に止まった律動と、身体に降りかかる生暖かい液体。次いで重々しく物が倒れる音と銃を扱う者ならば瞬時に分かる香りに思考は停止し、混乱した。
「あーあ、…つまんないなぁ」
凄みのある声ではない。むしろ通常と変わらぬ声に言い知れぬ寒気を覚えた。荒い息遣いだけが鼓膜を刺激し続けていると、視界が開ける。
「ぁ…」
「おはようギル。どんな夢を見れたのかな…?」
焦点の合い始めた目の前にはにこりと笑う弟がいた。その笑顔に似合わぬ頬についた赤いものは何だろうか。分かっている筈なのに答えが出ない。いや、それ以前にソレは誰のものなのか。
「兄さんが他の男の名前なんて口にするから、彼は死んだんだよ」
言葉とは裏腹に責める様子はなく嬉しそうな、しかし少々残念がるような声で彼は呟いた。「彼」を探し弟の背後を覗き込む。そこには血溜りに身体を沈めた若い男があった。血溜りは未だ広がり続けている。
「―ぁ、…あ…?」
ソレはピクリとも動かない。死んでいる。そうだ、さっき聞こえたのは確かに銃の音だ。黒ずんでよく見えないが頭部の出血が激しい。死因は一目瞭然だった。
「まぁ…他の男を使ってたって言うのでは人のこと言えないけど」
手にしていた銃が血溜りへ投げ捨てられた。揺れる視界の中で黒と赤が同化し、物体の姿は見えなくなった。
「片付けるから、兄さんはもう少し…夢を見るといいよ」
『おやすみ』と口の動きだけで伝えられ、そこで意識は途切れた。
「あ、おはよーギル」
「…ッ!」
目の前に揺れる金髪に思わず銃を取ろうと腰に手を伸ばす。が、そこには何も無く、よく見れば自分がベッドの上にいることに気がついた。
「まーまー、落ち着けって。大丈夫、俺以外居ないよ」
「……オズ…?」
ベッドに肘をつきにこにこと微笑んでいる少年は紛れも無く自分の主だ。見渡した部屋は自分の部屋ではないが、恐らくレインズワース家の一室だろう。あれは夢だったのだろうか。安堵すると同時に、脳裏にその回想が巡り出す。やはりあれが夢だとは思えない。
「夢じゃないよ」
「……ッ!」
思考を読み取ったかのように横から釘を刺したのは他でもないオズだ。先程までとはうって変わり冷水のような温度を感じない瞳が此方を見据えている。彼を慕い順ずるが故に、畏怖を覚えた。
「お前は今此処に居る訳だけど…何処までされたのかな」
何を、とは言わない。それはつまり知っているから。分かっているからだ。袖口から覗いていた手首が彼の手に包まれる。そこには生々しい赤い傷跡があった。
「――オズ…」
傷口に唇が触れ、ピリッと小さな痛みが走った。所作は優しく労わる様だが、彼は機嫌が悪い。他でもない彼のことである。言わずとも彼の纏う空気で知れた。
「お前は俺のものだよ。…ね、俺が今どうしたいか分かる?」
彼の冷たい指先が唇に触れる。悪戯を思いついた子供のような瞳が、視界いっぱいに広がった。
怯えた心の奥底で、恍惚を覚える自分を見た気がした。
【Cave In】